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空き家問題を予防と活用でお助け!~上京空き家対策ラボに聞く~

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みなさんは「空き家問題」と聞かれて、どのようなイメージがありますか?
大型の台風の後、瓦や屋根が飛び破損し、そばを通る人や隣接家屋に危険を及ぼす困った存在。持主と連絡がつかず、町内でも打つ手なしの危険家屋。気づいたら空き家になって、前の住人がどうなったかわからない抜け殻のような存在。そんなところでしょうか? 実は、空き家になるまでに、目に見える以外の複雑な問題を抱えています。しかも、だれもが陥ってもおかしくないような…。
複雑な空き家問題をチームで解決に導くため「上京空き家対策ラボ」は、平成29年度第1回上京区民まちづくり円卓会議拡大会議上京!MOWをきっかけに結成されました。その経緯と想いをお聞きしました。

空き家問題は、空き家に「なってから」だけが問題ではない

空き家問題を検討する際、すでに空き家になっているものへのアプローチと、空き家予備軍を空き家にしない予防活動の両輪を考える必要があります。すでに空き家になっている場合、相続問題や未登記のため所有者不明になっていることも多く、問題が長期化する傾向にあります。
一方で、独居高齢者や、高齢者世帯の家屋は、長年蓄積された荷物で一杯の傾向があり、遠方の家族は介護がスタートする際、自宅介護のための清掃や手続きの際、初めて深刻な課題に直面し、その後疲弊したまま荷物に埋もれた家を相続することになります。多くの場合、荷物に埋もれた家はすぐに何らかの対応はされず手つかずのまま空き家化する傾向が高いです。

空き家問題は複合問題~だから知恵の結集が必要~

京都市都市計画局まち再生・創造推進室は、「京都市地域の空き家相談員」事業や、弁護士、司法書士さんによる空き家対策講座事業などを行っています。しかし空き家問題を解決に導くには限界があり、相談対応では、専門家でも一つの専門性に対して問題が幅広く対応に苦慮されています。
そこで上京区役所地域力推進室まちづくり推進担当は、一つの空き家問題に絡む複合的な課題に対し、行政の情報、法律の知識、流通の手法、片付けの対応、リノベーション、ソリデール事業など複数の利活用事例の紹介(詳細はメンバー紹介チラシをご覧ください)など、様々な専門家が連携し、知識を結集して対応できないかと考えました。

上京空き家対策ラボ(専門家チーム)の誕生

平成29年度第1回上京!MOW(上京!meet up~上京の未来に向けたまちづくり活動を育むワークショップ~)は9月4日に開催しました。「空き家にしないための活用推進チームづくり」プロジェクト(当時のグループ呼称)を含む、事前公募10テーマが具体的にプロジェクトとして動いていくために、テーマの提案者を参加者全員が情報、アイデア出し等で応援、後押しすることを目的としています。


第1回上京!MOWの様子

第1回上京!MOWでは、司法書士、弁護士、宅地建物取引士、片付け専門家、イベント企画、デザイン、町家専門家、空き家相談員、古物商、建築士(お1人で複数の所有資格あり)等、専門的知識をお持ちの方がチーム作りについて話し合い、その多くの方が参加してチームを結成することになりました。
(参考)平成29年度上京!MOWを終えて~アイデアを具体化し、一歩進める~
http://www.kamigyo.net/public_html/event_report/report/20180228/

その後会議を複数回開催し、上京!MOW参加者の他、チームに興味を持たれた専門家も加え、チームの方向性、具体的に起こすアクションなどを話し合いました。 例えば、個々の案件毎に、必要と思われる技術や資格をチームの中で組み合わせて提案し取り組む体制をつくれないか、空き家対策について必要な資格や技術を持ったメンバーが一同に会した相談会を開催できないか、等。こうして、専門家チームは「上京空き家対策ラボ」として始動しました。
会議では、空き家所有者、空き家予備軍とどうやったら出会えるのか、という問いもでました。これまで空き家相談をされてこられたメンバーの経験上、空き家予備軍に対してのアプローチが非常に難しいという意見があったからです。

「アナタのミカタ 実家のカタづけを考える時間」開催へ


幻のVol.2を含む3回分のイベントチラシ

Vol.1のチラシの内部

空き家問題は複合問題であるが、空き家に至る経過のどこかで回避できるタイミングがあるのではないか、という視点から「アナタのミカタ 実家のカタづけを考える時間」を開催しました。 第1回は、「空き家問題を抱えるA子さん」のストーリーと、A子さんの過去にさかのぼって、問題を回避する対応策を説明する前半、参加者が専門家に質問し、解決のための情報を共有する後半にわかれる二部構成です。


A子さんのストーリーと対応策

今回のターゲットは空き家予備軍の方です。アンケートによると、参加者の3分の2が上京区内在住者、年代は30代~50代が3分の2で、概ね狙い通りの方が来られました。
参加目的は、
・認知症対策、親の介護問題など自分の抱える問題の解決の糸口になればと思った
・実家の片付けに関心があった
・チラシのA子さんが他人事と思えなかった等と、ターゲットにあわせたチラシ内容に興味を持たれており、参加の感想では、
・予想より役に立つ情報だった
・母が祖母の相続等で困っているのを見ているので、今後のためにと軽い気持ちで参加したが、案外自分も身近に迫った問題だった
・介護と空き家について知りたくて
と、親の介護問題や、実家の片付けに関して危機感をお持ちの方が参加されたことがよくわかります。第2回予防編は台風のため中止しましたが、第3回を予防編&活用編とし、三パターンのストーリーと予防策を紹介、情報を共有するワークショップを挟んだほか、個別相談会も並行して実施しました。


上京空き家対策ラボメンバーにお聞きしました


何名かのメンバーの方に、チームへの参加理由と、空き家問題の現状に関して持たれている意識についてお聞きしました。

<Tさん>
ご縁あってソーシャルビジネスに興味があり、地域との繋がりを支援してきました。幼少の頃より西陣という地域で育ち、実家のある上京区で、何かできることがあるのではないだろうか?と思っていたところに、このラボのスタートするタイミングに恵まれ、参加を決めました。リサイクルのアドバイス、整理整頓の相談業務を7年前からしており、空き家の現状を目の当たりにしておりました。そして最終的な惨状を数多く肌で感じ、そうなってからでは遅い!とはっきり言えます。その中で、空き家になることがわかりながらも、なんとなく放置しているご家庭が多く、このままでは地域の空洞化が危ぶまれます。さらに、物の処分は年々難しくなっており、その資金難も大きな問題となっています。そこを注意喚起して住みよい環境に繋げられればと思います。

<Iさん>
私は、かねがね地域のボランティア活動に従事してきていますが、活動を通じて皆様方に最も貢献できるのは、職業的な専門知識を生かしての活動奉仕だと考えています。ですので、専門的知識を活かすべく、ラボに参加しようと思いました。空き家が放置されているのは、空き家所有者が空き家の売却や利活用についての充分な知識を持たないことが、要因の一つであり、相談会やセミナー等で啓発していきたいです。

<Gさん>
千本商店街 朱雀大路の街で役員をさせて頂いている関係で、平成28年第1回上京区民まちづくり円卓会議拡大会議上京!MOWに参加し、参加回数を重ねる中、何かお手伝いできることはないかと思うようになり、空き家問題のワークショップ参加から今回のメンバーに入らせていただきました。年々増え続ける空き家問題を建築・不動産を生業とします立ち位置で、空き家の削減、活用に取り組んでおります。

今後の上京空き家対策ラボに期待!

これまで上京区役所で開催する形式の「アナタのミカタ 実家のカタづけを考える時間」でしたが、次年度は上京区内で地域等が主体で開催する勉強会に出向き、内容をカスタマイズして講座を実施する予定です。地域の中で空き家予防の意識を早い段階から持ってもらうことが目的です。それと同時に、個別相談会も2~3か月に1回程度行う予定です。そのためにHPの準備もされますよ。
もし、空き家予防の勉強会をされたいというグループがいらっしゃったら、一度、上京空き家対策ラボに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

<上京空き家対策ラボ 問合せ>
上京区役所地域力推進室まちづくり推進担当
電話 075-441-5040

レポーター

松井 朋子(まつい ともこ)

京都市まちづくりアドバイザーの立場で、空き家対策ラボチームのサポートで参加。
A子さんのストーリー作成時には、並々ならぬ執念を燃やす。これをきっかけに、実家の片付けもしはじめ、将来的に実家を有効活用する夢が持てた。

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