平成29年度第1回上京!MOW
    「地域の文化遺産を活用したまちあるき企画」のワークショップに参加して

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「上京!MOW」は、上京区役所で昨年度(平成28年度)に2回実施され今回で3回目にあたるそうです。
開会では林上京区長の大変元気のあるご挨拶とこれまでの経緯についてのご説明があり、区の担当の方からは本日の大まかな流れとガイダンスがなされました。

このガイダンスによると、用意された10件のテーマについて提案者からの各々2分間のプレゼンテーションをよく聞いて、自分が関心を持ったテーマのワークショップに参加すること、途中の移動も可能ということでした。

続いて、10件のテーマについてのプレゼンテーションがありましたが、いずれも各自の持ち時間である2分間を超えそうな熱のこもったものでした。

そして私は9番目のテーマ「地域の文化遺産を活用したまちあるき企画」に参加することにしました。京都に移り住んで2年、地域に根差した文化が脈々と受け継がれていることに驚いていますが、まだ出会っていない「文化遺産」のことも知りたいと思いました。

いよいよテーマごとに分かれてのワークショップの開始です。

9番目のテーマでは、提案者の大石さん、ファシリテーターの天岡さんによって、ワークショップがスタートしました。

参加者はとても個性的な方が集まり、多彩な意見が期待されます。
語り部とまち歩きガイドをされているFさん。「西陣の町家・古武」を主宰されている方で、上京全域の歴史的、文化的価値を平易な言葉で発信できる語り部がたくさんできればよい、具体的には17学区に170人!とのお話をされました。

春日学区の役員をされているMさん。10年間、学区内のまち歩きガイドをされているとのことで、もっとほかのことも知りたい、御所の向こうのことを勉強して、知識を増やしていきたいと大変元気の感じられるお話でした。
一応参加者でもある私は、レポーターであることを説明した上で、ここで扱う文化遺産は今はまだ埋もれているようなものなのか、有名どころなのかに興味があると発言しました。

観光企画会社の代表をされているTさん。後でネットでみてみると「地元民しか知りえないディープな京都情報や名所などの穴場をご提供」といった仕事をされている方で、心強い援軍の参加です。自己紹介を兼ねて、北野・西陣は修学旅行向けのコースがない。京都検定1級の人でもしゃべれない地域。修学旅行生にも門戸を開いてくれるような地域になってほしいとお話しされました。

初めに、「今年(平成29年)3月に「北野・西陣でつづられ広がる伝統文化」が京都遺産に初認定されたことを受けて、この文化遺産を巡るためのスマートフォンアプリの配信を予定している。文化遺産と呼ぶことで文化財よりも幅広い対象を考えている。スタンプラリーを楽しむほか、説明やクイズによって歴史、文化への理解を深めるアプリを作成する予定で、まち歩き企画のためのスポットやコースを考えたい。」と、提案者から、改めてテーマの説明がありました。

議論の前半は、主に各参加者が思いのたけを述べる形で進みました。印象深かったお話をいくつかご紹介します。(以下「○印」は発言内容)

〇上京には政治、天皇、僧侶、匠など色々なものが入っており、五目飯のようなもの。1220年の歴史があり、源氏物語、方丈記、徒然草もみな舞台は上京にある。
〇上京に天皇がおられたことで御用達がみな上京にあった。上京区では石ころ一つにも歴史がある。

さらに議論は続きます。

〇上京区は語らないと分からない。語れば魅力が出てくる。例えば、海外の客に建物が密集している場所を案内する時でも、ここはかつてこういう話の舞台だったと語るとイメージができてくる。
〇実際にまち歩きガイドをやっている経験でも、うんちくを語る方がうける。
〇ただ見るだけではなく説明してあげないとアカン。

ここで求めているのは西陣北野の魅力を伝えることのできるモデルコース。それをスマホのアプリに利用する。スタンプを押すか押さないかは2次的なもの。このアプリでは今は何もないところでもここはこういう場所だったんですよと伝えることができる。

それはストローリー*でやろうとしていることに通ずる。また今日の別テーマでデジタルマップの上で情報共有サービスをやろうとしている取組みにも関連している。

*ストローリー(Stroly):京都市は(株)ストローリーと共同で、京歩きマップ及び市内の264基の観光案内標識をスマートフォンで閲覧可能かつGPS情報を利用可能にする実証実験を開始している。

〇スマホに語らせればよい。上京区は、語らせないと魅力がない。文字情報でも音声情報でもよい。スマホが語るという視点でやると面白い。
〇奈良の平城京のプロジェクトでアプリを作っていた。平城京の説明を藤原不比等が出てきて「私はフジワラノフヒトです。」とやっている。「私はスガワラノミチザネです。」とやればおもしろい。
〇語ってもらう時に、いろいろな説があることが厄介だが。との意見には、それは、そう説明すればよい。行政が説明するとシバリがあるかもしれないが、まち歩きチームが説明するなら大丈夫。
〇このアプリに入れる情報(コンテンツ)が欲しいという話に対しては、それは山のようにある。FさんMさんTさんが知っている所などをコース化した時に、いかに魅力的なものにできるかということがポイント。

休憩をはさんだ後半からは具体的なモデルコースが続々と提案され、意見交換が行われました。

(1)源氏物語コース
源氏物語ゆかりの場所には説明板ができている。そこを歩くだけでもコースができる。源氏物語は、海外の人が良く知っている。外国人を相手にすることも考えた方がよい。弘徽殿、桐壺、清涼殿など主な場所は内裏跡に集中している。現在の山中油店のゲストハウスの前など。また、有名な葵の上の車争いの舞台になった場所もある。葵祭の斎王の行列のコースだった。



▲弘徽殿説明版がある場所。

(2)千両ヶ辻コース
江戸時代に西陣織の商いの拠点として繁栄したところ。明治期には銀行が9行、運送会社が30あった。
千両が辻に修学旅行生を30人送り込む企画がある。友禅体験、料理体験、ガイドさんの案内でのまち歩きなどを行う。
(3)上七軒と北野大茶会コース
(4)北野天満宮ゆかりのコース
北野神社は学問の神だが、遣唐使廃止を宇多天皇に進言したという話もある。まさに現在の文化を創り出した人。「あ、そういうことか。」という発信をしたら面白いと思う。
北野神人の居る七保村まで広げると面白い。仁和寺街道のあたり。瑞饋(ずいき)祭りと重ねて。これはマニアック、おもしろい。


▲瑞饋祭の神輿。

(5)聚楽第コース
隠れた歴史としておもしろい。中立売智恵光院のあたり。ドラッグストアの下が本丸だった。石垣も出ている。コースに考古資料館も入れるとよい。
(6)織成館、岩神さん、雨宝院、本隆寺コース
岩神さんは今は小さな祠だけだが、以前は本格的な社があった。
(7)千本通りの釘抜さん、千本ゑんま堂、千本釈迦堂コース
応仁の乱では釈迦堂だけが残った。ゑんま堂の狂言もある。声の出る狂言で分かりやすい。
(8)御用達(ごようたし)コース
御所に出入りしていた御用達の老舗が多い。お茶の千家があるから有名な和菓子屋はみな上京区にある。烏帽子、金襴など色々あるので調べてみるとおもしろい。

こうしてたくさんの楽しそうなコースが出てきたところで、予定の時間となりました。各自まとめに入り、参加者は「まちづくりを応援 芽が出るメッセージ(あげます編、参加編、応援編)」の記入を行いました。


▲まとめ中の様子

▲ワークショップの成果

この間、隣の席のMさんから御所東小学校の発掘調査の出土品の写真をスマホで見せていただきました。まち歩きの説明用ということでしたが、現地ではもう見ることはできない映像を手軽に見ることができるのはスマホの便利なところだなと思いました。

最後に、10件のテーマの提案者からの報告があり、上京区まちづくり円卓会議の議長である新川先生からのまとめの言葉を頂き、進行中の3つの事業のPRタイムと進んで閉会となりました。


▲成果発表

【まとめ】
活気のある、楽しいMOWとなりました。十人十色の多様な提案でしたが、いずれも自分たちで地域を元気にしようという意欲が伝わってくるものでした。 私もレポーター兼参加者として、少数精鋭の皆さんに交じって一緒に文化遺産コースを考える議論に参加できました。参加者の皆さんが語り部にこだわられるのは、上京区の文化遺産の多くが、見るだけで良さが分かるものではなく、語ることで魅力が伝わるものだと確信されているからだと思います。また、相手の数や知識、関心の程度に合わせた説明の仕方や当意即妙のアドリブなどの楽しさがあるということも語り部の強みかと思います。

今回の目的であったスマホの案内アプリは、そもそも語り部によるガイドとは性格が違うものですが、「私はスガワラノミチザネです。」と語るキャラクターの提案もあったように、素敵なコースを見つけ出すことと併せて、使い勝手の上でも楽しい工夫が盛り込めれば素晴らしいと思いました。

レポーター

網野正観

一昨年の秋に、上京区内の改修された京町家を購入し、夫婦で移り住んできました。もうじき丸2年になります。地域で催される行事を楽しみながら、京町家をはじめとする文化財の保全・再生にも関わりたいと、京都市文化財マネージャーへの登録や市民団体の活動に参加するなど勉強やお手伝いに忙しくしています。

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