上京ふれあいネット カミング

普段着として着物をきるということ
~「ふだん着物相談&座談会」に参加して~

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▲お話をしてくださった板倉賀奈子さん。

2018年5月27日(日)に雪柳庵にて開催された「ほんまもんの『目利き市』」において、「超初心者向け・ふだん着物相談&座談会」に参加し、普段から着物を着慣れていらっしゃる板倉 賀奈子さんのお話をお聞きしました。


板倉さんは、京都の伝統産業・京繍(きょうぬい)を生業とする家に生まれました。京繍は着物に日本刺繍を施す技術で、幼いころより着物が身近にあり、またご家族が着物を着る姿を見て育ったそうです。そのため板倉さんの着方はふだん着物の着方であり、お家で代々伝わったものだとおっしゃっていました。


▲着慣れた着物姿が美しい板倉さん。「ほんまもん」を知る西陣の女性です。

わたしは、ふだん着物の着方は決まったものではなく、ひとそれぞれだということに何より驚きました。また板倉さんのような、普段着で着物を着ている方でも、着付け教室のような着付けは別であるとおっしゃっていたことも驚きでした。


▲質問に丁寧に答えられる板倉さん。

座談会では板倉さんが普段どのように着ているのかということや、そのときの工夫をお話ししてくださいました。実際に帯を結んだり襟の抜き方などの分かりやすい実演を交えながら、お話を聞いたり参加者から質問をしたり、という形での進行でした。手数を減らす工夫として安全ピンを活用していたり、帯を締める前に後ろ部分の形をつくっておいたりと、普段着ならではのお話がありました。また、細帯を作って楽しんでおられるということで、いくつかを見せていただきました。
お話のなかで、わたしが一番面白いなと思ったのは自転車に乗るときには前掛けを身に着ける、というところです。この日も板倉さんは、水色の前掛けを身に着けて雪柳庵に自転車で来られていました。ほとんどの人が着物を普段着としていた時代には自転車を乗ることはなかったので、このような工夫は現代の生活からつくられたものだと思うと、とても興味深いものでした。


▲帯に挟む板もいろいろ。使い方によって着物姿がキマります。

お話を聞いて、わたしが強く感じたことは「着物は普段着である」ということです。現代では多くの日本人が洋服を普段着とし、着物は晴れの日に着るものとして日常生活からは遠い存在になっています。しかしその着物も、安全ピンなどの現代の道具を使用するなどして、今の時代にあわせた工夫が生み出されたりと、普段着物を着ている人たちによって現代の日常として存在しているのだということが分かりました。


▲古い着物は切って、ひっぱり(汚れ防止のため着る上着)にしてしまうとのこと。

わたしが着物に袖を通したのは片手で足りるくらいです。なかでも振袖を着つけてもらうのはかなり大変でした。帯をこれでもか、というくらいきつく締められてかなり苦しかったのを覚えています。そのため着物といえば、晴れの日の衣装として憧れを持つ反面、着るために多くの手順があり、道具がたくさん必要で体力を消耗するもので、普段着とするには難しいという印象を持っていました。


▲「ふだん着物にはほとんど道具はいらない」とのこと。

西陣織で有名な「西陣」の方の「着物」の座談会というだけで、わたしは自分の持つ着物の固定観念から必要以上に身構えていたのではないかと思います。着物というだけで特別視をしていたのかもしれません。今回の座談会では着物に対する見方が変化しました。今まで考えていた着物と“ふだん着物”とはまた別ものであるのだということを学び、着物をより身近に感じるようになりました。

「これから着物を着てみよう!」という方へ、座談会でふだん着物を着ていらっしゃる皆様からお聞きした、購入する際のポイントをお伝えしたいと思います。
それは、「着物や小物を購入する際に重要なのは、お店の方からいろいろ勧められるままに買うのではなく、本当に必要なものだけを吟味して買うといい。」ということです。
例えば、着物を着るとき、小道具は最小限でよく、腰紐は三本あれば大丈夫ということでした。着付け教室の中には、腰紐以外の小道具を使うところもありますが、ふだん着として着るならば、腰紐だけで着付けをしたほうが楽に着付けができるのです。
また、ふだん着のときはなるべく柔らかいものがよいので固い帯枕は不要だということも挙げられていました。これは日常動作を行うとき、例えば椅子に腰かけるときは固い帯枕では姿勢が辛くなるからといった動きにくさが生じるからです。
ほかにも着物販売店さんの特徴なども教えていただきました。これから選ぶ方にとってはかなり参考になるお話でした。

今から着物をはじめてみようという方は、このような企画に参加してみてはいかがでしょうか。

【補足】
板倉さんが「京女風ふだん着物着こなし講座」の中で教えられている着物の着方について、板倉さんからコメントをいただきましたので補足いたします。

「私の着物の着方は、祖母が母に、母が私に伝えた着方なので、はっきり言ってバリエーションはありません。そして人に教える着方ではないです。あくまで、自分(我が家の体型)に楽で一日中着ていても平気で毎日着ることが前提の着物の着方です。
つまり、ハレの着方ではないのです。ハレの日にも着れる着物の着方、そして、帯結びの色々を知りたい方は是非、着付け教室へ行ってください。人に着物を着せる着せ方を知りたい方も、お教室へ!
私がお伝えできるのはあくまで、自分で気軽に日常に着れる着方です。そういう違いがあります。要注意です。
そんなわけで、私もハレの日や、撮影での着用の際には、美容院行きます。もちろんね。」

レポーター

広瀬茜

京都の大学で、福祉について学んでいます。
ゼミでは社会調査について勉強しています。まだ研究テーマは決まっていませんが、いろいろなものに触れて興味のあるものを見つけていきたいと思っています。

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