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えっ上京区で鮎釣り大会??~上京区140周年記念事業「鴨川の天然鮎」友釣り大会について~

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競技に没頭する参加者、荒神橋から賀茂大橋を臨む鴨川を撮影

<鴨川で釣り人はじっと我慢する>

きらきら光る鴨川の水面を睨みつつ、釣り人達はじっと立つ。おとり鮎が元気よく泳いでいる。7時30分の開会式時点ですでに気温は30度。どんどん気温は上がり、10時頃には体感で33度ぐらいだったのではないか。河川を吹く風に若干救われるが、じりじりと暑い。
橋の欄干から自転車にまたがったままその様子をのぞき込む男性、日傘片手に橋下を眺める高齢の女性、河川敷で健康ウォーキングされているサングラスの男性。写真撮影をしていた私に向かって、皆口々に言う、「こんなところで何を釣っているの?本当に釣れるの?」と。

<鴨川で開催された鮎釣り大会の概要>

大会は、『上京区140周年記念事業「鴨川の天然鮎」友釣り大会』という。多くの方の尽力により鴨川の水辺環境が向上し、天然鮎の遡上が出町柳まで確認されているということと、さらなる鴨川の水辺環境保護活動への理解を上京区民に深めてもらうためこの大会を開催した。上京区役所でのパネル展示の実施や、大会直後に主催者等関係者と参加者がみなで鴨川の清掃を行った。
関係者は行政から釣り関係、環境関係など幅広い。
主催:上京区体育振興会連合会、賀茂川漁業協同組合、上京区役所
協賛:がまかつ、シマノ、カツイチ、オーナーばり、日本釣振興会京都府支部、京都釣具商組合
協力:鴨川を美しくする会
後援:京都府、京都新聞社、京の川の恵みを生かす会

釣り方法は、天然鮎の縄張り意識が非常に強い習性を利用した技法である「友釣り」である。天然鮎がどのあたりに縄張りを持っているのかを読んで、生きている養殖鮎に仕掛けをつけ泳がせるので、全くの初心者には難しい。河川敷から川の中に降りて釣るので足場も選ばなくてはならない。
大会の開催場所(今回鮎を釣って良いとする場所)は、下流は丸太町橋、上流は賀茂川の葵橋までの約2㎞の範囲である。


会場で参加者に掲示された競技会場の範囲の説明版

大会の様子を時系列に追うと、大会は令和元年7月30日(火)
午前7時30分開会式➡抽選により、A/Bに分かれる➡おとり鮎2匹を受け取る
午前8時競技開始
午前9時40分中間地点へ集合、AとBのエリアを入れ替える➡競技再開
午前11時20分検量場所(開会式会場横のおとり鮎配布場所と同じ)へ集合し検量
検量が終わった人から河川の清掃活動開始
閉会式:成績発表、表彰式、副賞抽選会、閉会
となる。


林建志上京区長の挨拶

澤健次(賀茂川漁業協同組合)競技審判長から競技会場の説明

開会式の様子

おとり鮎の配布場所

おとり鮎の配布

鴨川で競技にいそしむ参加者

あっ釣れた!

中間地点に集まる参加者

市バスやトラックが走る上京区で競技は行われた

検量ポイントに集合、釣った鮎をすべて出す


鮎のサイズを検量し記録

検量が終わった参加者から清掃活動開始

河川敷、河川の中ともに拾い歩く


大会結果

受賞者の集合写真

参加者は21人で、全員が友釣りの経験者である。京都市外からの参加者もあった。上京区内からの参加者は、釣りの愛好者から、昔釣りを楽しんでいたことを思い出しての方もいた。
おとり鮎2匹を弱らせないように気を付けて競技する必要があること、川の中の移動や長時間、起立の姿勢で川の中で鮎との読み合いをしていること、制限時間内に何匹釣れるのかを競うことなど、釣りはスポーツであると再認識させられた。

<上京区で鮎釣り大会をする意義、想いについて聞く~大会会長 寺林勇さん>


たまたま4年前、上京区内の鴨川に天然の鮎がいると聞いた。本当に天然ものがここで釣れるのか半信半疑だったが、遡上が本当ならば上京区140周年で大会をやってみようとなった。昨年、プレイベントとして大会を試行し、本当に京都のど真ん中で釣れて喜んだ。
「釣り」はスポーツであり、上京体育振興会が主催する意味がある(寺林さんは上京体育振興会会長)。多くのスポーツ推進員が運営に協力し、また釣り人と協力して川を清掃したことも大きい。今日も足を止め、大会を見物する人が多かったが、京都のど真ん中に天然鮎が遡上していることをPRし、人々が手を携えて運営する大会に上京の人達が見に来てくれたらうれしい。

<上京区で鮎釣り大会をする意義、想いについて聞く~上京区長 林建志さん>


林建志さん

釣りの横で川遊びを満喫する子ども達

平成28年ぐらいの川辺の環境整備の結果、天然鮎が戻ってきていると聞き、近年上京では蛍も見られることも併せて、ダブルですごいことだなと思っていた。もっと上京の自然環境の良さをPRしたいと考えていたが、実際にこの大会の様子を橋の欄干の上や河川敷で足を止め、多くの方が見てくれており、良いPRになった。河川敷や河川の中にあるごみ掃除もし、大会を実施すること自体が環境整備を担っている。多くの方の協力を得て本大会は実施したが、自然環境も含めあらゆることに恵まれていることを感じ、ここまで自然を堪能できる機会に感謝したい。鮎釣りには向かないかもしれないが、大会のすぐ横で子ども達が川遊びをしている。河川の中では鮎を釣る人があり、河川敷で楽器や歌の練習する人もあり、思い思いで鴨川の環境を楽しんでいる人々がいる。素晴らしい光景だと思う

<上京区で鮎釣り大会をする意義、想いについて聞く~<上京区在住の参加者 大石宜男さん>


京都100万都市の真ん中で天然鮎が釣れるとは思っていなかった。他の観光都市内に走る川に鯉が泳いでいるのはよく見るが、天然鮎はほとんど聞かない。この大会を機会に、天然鮎の遡上をPRしてもらい、河川のごみ拾いに一般の人も参加してもらえたらいいのではないか。
私は京北や周山、美山での鮎釣り経験があるが、昨今、釣り人口は減っているようで、鮎釣り愛好者は年齢層が高い印象がある。自然のことだから釣りに良いときも悪い時もある。2~3年前は鴨川に多くの鮎が遡上していたが、昨年の台風21号の影響は水生環境にも大きな影響を与えた。もちろん沢山釣れることも良いのだが、少なくても釣ったものを美味しく食べる楽しみを持ってもらいたい。

<上京区で鮎釣り大会をする意義、想いについて聞く~賀茂川漁業協同組合長 澤健次さん>


かつて鴨川の環境は鮎の遡上を阻害していた。鴨川の龍門堰(下鳥羽小学校の近く)は落差が大きく、龍門堰の手前までは鮎が来ているのに、魚道ができるまでは遡上はかなり難しかった。七条大橋、三条大橋と鮎にとって厳しい落差工が続くが仮魚道が設置され、1/1000匹ぐらいは遡上するようになってきた。一方で、鴨川の上流も生物の種類が非常に少ないように思う。河川の管理は確かに大切だが、固い護岸ばかりでは石の隙間がつくれず、本来そういったところに住むようなウナギ、モズクガニなどが住めない。蛍はカワニナを餌とするが、カワニナのエサはコケである。そういった生物バランスがあるのに、河川の清掃活動で一見きれいな川が生物にとって住みにくい環境なのだ。
鮎釣りをする釣り人は、こんな川に鮎がいるのかと訝しがるだろう。昨年の台風の影響もあり非常に条件が悪いが、少ないながらも鮎は遡上してきている。悪条件でも街の中で鮎釣りをすることは、それを見る人に鮎の存在をアピールすること共に、釣り人にも鮎の存在や護岸の環境、生物多様性の重要性を改めて考えてもらうことにもなる。上京区の人達にそういったことを考えてもらう良いきっかけなのではないか。

<大会を見つめて>

まず、こんな街中で鮎釣りができるの?という驚きは隠せなかった。正直なところ興味本位な見方をしていたかもしれない。しかしこの取材を通して、釣り人や漁協の方のお話しを聞くことができ、鮎も含めた鴨川の生物の存在を考えるようになった。大会中、鮎以外にオイカワという魚を釣り上げた方、おとりの鮎を40㎝以上の鯉に持っていかれてしまった方もおられ、様々な生物の存在を感じることができた。鮎が遡上する環境づくりの一環で魚道の整備もされていたが、多様な生物がいきいきと住める環境づくりは、もっと知恵を出し合えばできるのかもしれない。


釣られたオイカワ

生物多様性について語る林区長と澤組合長

京の恵みを活かす会の方ともに魚道を設置する大会関係者

鮎の友釣りという技法は、鮎の習性を熟知しないとできないらしい。鮎が石についたコケを食べた後をハミ跡というらしいが、見慣れた人にはハミ跡はすぐ見つかるそうだ。川面を眺めてみたが私にはまったくわからずじまい。一方、川面を見つめていた多くのサギ達には鮎の存在が良く見えていたのかもしれない。釣りにおいては、人間とサギはライバル関係であるのだなと思った。


落差工で鮎を狙うサギ

コケの見方を教えてもらう

スポーツとしての鮎釣りではあるが、上京の環境の良さ、天然鮎の存在、そのための努力、生物多様性の大切さなど多くのことを学び、気づかせる良いきっかけであり、上京内外の様々な目的を持った方がそれぞれの目的を活かすために協力し合えるという良い大会であると素直に思った。

レポーター

松井 朋子(まつい ともこ)

京都市まちづくりアドバイザー上京区担当
釣りは全くせず。水中生物であるカメはこよなく愛す。
平成30年に実施された140周年プレイベントの大会に続き二年連続で撮影をする。

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