上京ふれあいネット カミング

文化庁移転記念事業・京都市歴史資料館開館40周年記念特別展
「京都市歴史資料館がある場所-御所の東の今と昔―」
シンポジウム「京都御所と公家が住む町」

最新レポート一覧


▲案内パンフレット

秋晴れの令和4年9月11日、上京区総合庁舎において「京都御所と公家が住む町」をテーマにシンポジウムが開催されました。


▲井上満郎氏(京都市歴史資料館長、京都産業大学名誉教授)

初めに京都市歴史資料館長の井上満郎氏より開会のご挨拶があり、京都市歴史資料館開館40周年記念特別展(以下、「特別展」という。)との関連で催されたと説明がありました。御所の側面の空間である寺町丸太町から今出川周辺が京都の文化、ひいては日本の文化にとっていかに大切な場所であるか今後のあるべき姿を考える機会にしたいとのお話に、寺町通に面して居を構えている私はスタートから期待に胸が高鳴りました。


▲記念講演:村井康彦氏(前京都市歴史資料館長、国際日本文化研究センター名誉教授)

記念講演は講師の村井康彦氏が、「王朝文化の源泉」のテーマでユーモアを交えてお話をされました。
前京都市歴史資料館長で国際日本文化研究センターの名誉教授である村井氏は沢山の資料をご用意くださり(中には手書きのものもあり、ご本人曰く「今時貴重」と冗談をおっしゃっていました。)、平安京で王朝文化が早い時期から順序立てて、こんこんと湧き出る源流のように、それがいかにして尽きることなく今日に至っているのかを熱く語られました。


▲参加者は熱心に聞き入っていました。

飛鳥、平城京から長岡京、山城遷都、平安遷都と移り変わる都を皇統の転換との関係、事件との関係、エピソード、当時の制度や文化なども交えて分かりやすくお話しされました。
私は御靈神社の氏子ですので、早良(さわら)親王のお話には特に興味を持ちました。また、大覚寺のいけばな嵯峨御流を仕事にしているので嵯峨天皇のお話は今までもいくらか知識があるつもりでしたが、存じ上げなかった話もあり、とても惹きつけられ、もう少し続きを伺う時間があればと残念な程でした。
紫式部の源氏物語も当時の時代背景と関連づけて伺うと面白くて、このような講演を拝聴してから大河ドラマを視聴できるのが(少し先ですが)とても楽しみになりました。
最後に、平安文化は複合文化であり、遣唐使が廃止され国風文化が育った訳ではなく、唐文化との融合で日本独自の文化が京都という環境で花開き、今日に続いているというお話で締められました。開いた花をしぼますことなく、これからも未来に繋げていくのがこれからの私たちの大切な責務なのだと思いました。

続いて、パネルディスカッションでは「京都御所と公家が住む町」というテーマで、豪華なパネリストが次々に登壇されました。


▲コーディネーター:吉住恭子氏(京都市歴史資料館歴史調査員)

初めにコーディネーターの京都市歴史資料館歴史調査員の吉住恭子氏より、現在開催中の特別展の写真を用いながらのご説明がありました。自分の住んでいる場所、日頃何気なく通っている場所の変遷が古地図や美しい彩色の絵図などによりリアルに伝わりました。
平安京の藤原道長の土御門第(つちみかどてい)や法成寺、京都御苑の遺跡(公家町遺跡、京都新城跡)、御土居(おどい)跡、京都博覧会等、タイムマシンで一気に寺町の歴史を知ることができたようでした。
お話を伺い、前期展を見逃したのを大変残念に思いました。早速、日を改めて後期展に伺った程です。(ちなみに、後期展は10月23日まで無料で開催されています。)自分の住んでいる場所の歴史を知ると、より深く愛着がわき地域を大切にできるように思いました。


▲パネリスト:山本雅和氏(京都市考古資料館長、京都産業大学客員教授)のプレゼンテーション

次に京都市考古資料館長で京都産業大学客員教授である山本雅和氏より、「京都御所と公家が住む町-遺跡と遺物から見る-」と題して同じく写真とレジュメを用いられてのお話がありました。
こちらも古地図、そしてワクワクする遺跡の珍しい写真、発掘された多種多様な生活の道具の数々に目を奪われました。焼き物やガラス製品のデザインの素晴らしさは、現在京都市歴史資料館で展示されていますので、実際に足を運びガラスケースにかぶりつきでご覧いただきたいと思います。
遺跡、遺物の美しさ、精工さにより御所の文化、生活を支えた多くの京都の職人の矜持の一端を感じました。
実際には、遺跡を見学する機会になかなか恵まれませんが、近隣にこのような場所があったのかと感嘆するような写真が次々提示されて本当に驚きました。マンションの建設や京都迎賓館の建設工事などで新たな発見がされ、これからも御所周辺はどこかを発掘されるたびに歴史が塗り替えられていくのだろうと思うと気持ちが高ぶりました。


▲パネリスト:冷泉 貴実子氏((公財)冷泉家時雨亭文庫常務理事)

そして皆様お待ちかねの冷泉家時雨亭文庫常務理事、冷泉貴実子氏の登場にはひときわ大きな拍手が起きました。
京都にただ一つ残った公家邸宅で重要文化財でもある冷泉家に伝わる文化、年中行事がテーマのお話でした。私も冷泉家の文化に憧れている者の一人で一般公開や展覧会にも何度か伺い、著書も何冊か拝読させていただいていますが、ご本人の解説に勝るものはないと、その流暢な語りにうっとり聞きほれてしまいました。
写真も沢山お示しいただき、建物や調度の解説を伺うと、また一般公開の時に改めて眺めてみたいと思いました。(ちなみに今年も11月3日から6日に京都非公開文化財の特別公開として拝観することが叶います。)場所ごとに先人の工夫が施され、だからこそ今に唯一残るという奇跡を私たちは目にできるのだと改めて思いました。 行事のお話はお正月から順を追ってありました。

書き初め、七草、とんど、歌会始、節分、ひな祭り、端午の節句、夏越の祓、乞巧奠(きっこうでん)、そして初雪・・・冷泉家の数多い行事の核となる部分を教えていただきました。
冷泉家の行事に用いられるものは、いずれも独特です。お正月飾りの根引松(ねびきまつ)に鯛の干物を付けるとか、お膳の長短二種類のお箸。雛人形も夫婦雛に西王母(せいおうぼ)、御所人形と様々で端午の節句の大将さん、そして私が身を乗り出したのは夏越のススキと楓の人形(ひとがた)のところで、いつか実物を拝見して作ってみたいと密かに願いました。
乞巧奠は旧暦の七夕行事で冷泉家の行事で最も有名です。京都府立府民ホールアルティで公開された時に私も拝見させていただいたことがありますが、やはり冷泉家という空間で行われると、その時間の流れ、空気感、温度や音も違って、さぞ古が偲ばれることだろうと想像しました。
初雪の日は藤原俊成の像に雪を供える行事をされるということでしたが、発熱された俊成公が雪を口にされた故事によるということが思いやりのある伝承で、本当に素晴らしいと思いました。
江戸時代の公家の生活、年中行事をその時代時代に合わせながらも、伝えるべき文化の香り、真髄というものを大切にずっと守ってこられていて、そのような場所がご近所にあるということに改めて感動しました。


▲井上満郎氏(京都市歴史資料館長、京都産業大学名誉教授)

最後に、京都市歴史資料館長の井上満郎氏から御所を支えたまちの姿と暮らしというお話がありました。
王朝文化は公家や貴族から生まれたように見えても、間違いなく支えていたのは一般の市井の人々であり、京都の市民の暮らしは御所と一つのネットワークを持ち共に生活を築き上げ、人々は御所の衣食住を支えて貴族のために上質なものを創り続けてきたのだと、それこそが京都ブランドであり誇るべきものなのだというお話でした。
まとめとして、「KYOTO DAIRI PROJECT」という平安京の内裏が焼失した1227年の千年後にあたる2227年に、内裏の復元を目指している事業にも触れられて、京都の元の姿を知ることは将来に必ず関わりがあり、過去を知り未来の羅針盤とするために御所のことを考えるのがとても大切なことだというご挨拶で閉会されました。

王朝文化の中心地である上京区民であることに誇りを持ち、歴史的なものも学んで次の世代へと引き継ぐ役割を果していきたいと願い、会場を後にしました。

レポーター

石川利佳子
知れば知るほど魅力ある場所の上京区で行われたシンポジウムで新たな刺激を受け、大変勉強になりました。

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