上京茶会とは、茶道に親しむ機会をつくるため、上京区文化振興会と上京区役所が昭和40年から実施しているお茶会です。春と秋の2回、主に上京区内の寺社を会場とし、春は表千家、秋は裏千家が協力してくださっています。
この春は初めて本満寺を会場として開催されました。
本満寺は広宣流布山 本願満足寺といい、日蓮宗の由緒寺院であり、京都八本山の一つです。江戸時代には、八代将軍徳川吉宗の病気平癒を祈願し効果があったことから、将軍家の祈願所として栄えました。春には桜や牡丹の名所としても有名です。上京茶会の日も美しい牡丹が咲いていました。
今回初めて、中学生以上25歳以下を対象とした限定席が設けられました。
上京茶会も初めてという特別席に参加した中学2年生の感想を中心にレポートします。
上京区役所によると、上京茶会は申込みが始まるとすぐにチケットが完売になるほどの人気事業だそうです。上京区の文化の高さを感じます。
今回、若い方たちにも文化に親しむ機会をつくろうということで立ち上がった特別席ですが、準備された12時~、12時30分~の2枠は共に満席でした。
受付を済ませると、靴を脱ぎ、待合というお部屋に案内されました。待合では、「お茶席は初めてですか?」と尋ねられ、8割くらいの方が初めてだった様子です。
お部屋には今日のお茶席でどんなお道具が使われるのかが展示されており、自由に拝見してよいと教えていただきましたので見に行ってみました。
「足を崩してよいのでリラックスして待っていてくださいね」と伝えられ、足がしびれた時の裏技のようなことも教えていただきました。(後ほど実践することになりました。)
いよいよ本席にご案内いただき、青い毛氈の上に正座しました。
亭主が点前座に着くと、半東(はんとう)さん(茶の湯で亭主を補佐して茶事を手助けする人)がご挨拶され、お茶会が始まりました。
袴姿の男性がお菓子を運んで来てくれました。
今日のお菓子は虎屋のもので、この時期に美しく咲く黄色い山吹の花をイメージしたお菓子ということでした。
自分の懐紙に、ひとつとってのせます。おいもで作られた黄色い部分がもちもちしていて、おいしかったです。
お茶も運んでいただきました。正座で集中していたせいか、いつもより苦く感じました。
いただいた後、お道具を拝見しました。
続いて、副席に移動しました。椅子席のお点前、立礼(りゅうれい)でした。
こちらでは青年部の皆様がおもてなしをしてくれました。「色々質問してよいですよ」と言ってくださり、お点前や道具、軸など、専門的な言葉についてもかみくだいて説明してくれました。和やかで楽しい時間となりました。
お菓子は大徳寺のそばにある松屋藤兵衛の「松風」です。お皿から懐紙ごととって、手で割ってどうぞと教えてもらいました。松風にはいくつか意味があり、 松の木に吹く風の他、茶の湯ではシューシューという釜の湯の音なのだとか。お菓子の意味、お軸の意味など初めて耳にする言葉もたくさんありました。
お茶をいただいた後、お道具を拝見しました。
特に印象に残っているのは、水指(みずさし)についてです。水指を制作された作家さんから直接お話を伺うことができました。
水指の表面はザラっとした感じでした。焼く前に色を付けるものの量(釉薬(うわぐすり))を少なくすると、このような質感が出るそうです。土の素材の良さを感じました。一方、水指の近くにあった茶碗は、青い色の部分がつるつる、ぷっくりとしていました。釉薬を多くするとこのようになり、色を濃くするためという理由もあるそうです。
次に、「棗(なつめ)は軽いですよ。実際に持ってみてください」と言われたので、持たせてもらいました。中にお抹茶も入っているのに、普段使っている食器と比べて、とても軽かったです。こちらは、紙と漆で作られています。
さらに、湯炭の下処理に3時間ほどかかったということにも驚きました。
炭を片づける方法も少し教えてもらったのですが、改めてお茶を点てるだけでなく、点てるまでの準備、点ててからの片付けも大変なことを知りました。
男女問わず、学生や社会人の方が参加されていました。参加した理由をきいてみると、先輩から案内されて、知り合いに勧めていただいて、など様々でしたが、「とても楽しかったです」と、みなさん笑顔でした。
おもてなしをしていただいた亭主の方や青年会の方は、「皆様の緊張が伝わり、こちらも大変緊張しました」「若い方ばかりの回はあまり経験がないのですが、興味を持っていただけてよかったです」と言っていました。
また機会があれば参加してみたいです。
岡元麻有/娘
娘と、日本に留学中の友人が参加しました。緊張しながらもみなさんが楽しんでいる様子、緊張感を大事にしながらも、丁寧にわかりやすく説明してくださるおもてなしの雰囲気が、初開催の特別席を盛り上げていたように感じます。
言葉や知識の壁を超え、おいしいお菓子とお茶、空間の持つ力で、終始適度な緊張感と穏やかな時間となりました。