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聞き語り合えるまちを上京から世界へ〜対話之町京都ヲ目指ス上京〜

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私たち同志社大学政策学部政策学科1回生は、アカデミック・スキルという授業の一環で、2022年12月7日「対話之町京都ヲ目指ス上京」という団体名で、上京に対話の場を広げる活動をしている小畑章(おばたあきら)さんを訪問し、お話を伺いました。


代表の小畑さん

対話がもたらす可能性に導かれて

小畑さんが関心を持つ「対話」。それは、私たちの日常的な会話でもなく、議論でもなく、会議での意見交換とも異なるようです。
ある日、小畑さんはフィンランド発祥の「オープンダイアローグ」について書かれた本を手に取り、勢いそのままで読み切られました。本には、統合失調症が対話でも良くなることが記されていました。
日本では、企業や経営者が利益を優先し、それをメディアも肯定する社会の中で、うつ病をはじめ精神を病んでしまう人がいます。孤独、孤立と言われるように、社会に居場所がない人もいます。「もし、経営者がこの対話を知れば、会社や世間はどうなるんだろう」「もし、統合失調症が良くなる対話をみんなが実践したら、この世の中はどうなるんだろう」と考え、「対話なら、医者ではない自分にも実践できて、統合失調症の発症を防ぐ、統合失調症と共に生きていける社会になるかもしれない」と思い、小畑さんは2016年から対話会を始めました。始めてみると、対話を求めて他府県から参加する人がほとんどでした。「対話が普通に行われる社会になれば」と小畑さんは「オープンダイアローグ」と呼ばれる対話を学び、広げる活動をするようになりました。

ベンチを置いて対話する

2021年の秋、小畑さんはベンチを作って自宅前に置きました。ビールケースの上に木材を置いたベンチは、シンプルな形ですが、誰もが安心して座れるように、構造材を入れて頑丈に作られています。
「対話するにはただベンチを置けばいい」という言葉を聞いて始めたベンチ置くだけプロジェクト。略して「置きベン」は口コミで広がり、今では上京区内のいくつかの場所にベンチが置かれています。
小畑さんも自宅前のベンチに座り、コーヒーを飲んだり、本を読んだりします。通りかかった人に「おはようございます」と声をかけると、会釈や挨拶が返ってくることがほとんどだそうです。「多分、僕をベンチのある家に住んでいる人、素性の分かる人だと思うのではないかな」と小畑さん。通りかかった人はきっと安心感を覚え、心を開いてくれるのでしょう。 挨拶をするけれども返事は強要しない。「強要なんてしたら、ここを避けて通るようになってしまいますよね」と小畑さんは言いながら、ベンチに座っているうちに顔見知りになり、会話が生まれるといった素敵な出会いもあると教えてくれました。
しばらくして、土曜日の夜にベンチに座りながら対話会を行うようになりました。私たちがベンチに座って取材をしたように、円になって話します。対話する時に役立つのが、ムーミンの童話に出てくるミー。ミーを手に持った人が話して、周りの人たちは聞きます。


ベンチに座って取材をしました

小畑さんに「どんな人たちが対話会に来ますか」と尋ねたところ、決まった年齢や職業、団体の人が来るわけではないとのことでした。
そもそも、この対話の場は、ある特定の人たちを狙って開かれているのではなく、たまたま出会った人と、うっかり繋がる場でもあるそうです。ぶらさがった提灯を見て観光客もやって来るのだとか。「来るもの拒まず」ということを大事にされていました。

大勢ではなく、必要な人に届けばいい

活動についてどのように情報発信しているかについても聞いてみました。
小畑さんは、フェイスブック、インスタグラム、ツイッター、ユーチューブなど様々なSNSを活用されていました。しかしながら、それらを用いた活動の発信はさほど重要ではないのだそうです。実際に、小畑さんはラジオでもお話されているのですが、取材前に、私たちが独自に調べた段階では、その内容を把握することはできませんでした。つまり、世間に広く知らせることがこの活動の目的ではないのです。「必要な人に、自分の行っている活動が届けばそれでいい」と小畑さんは語ります。

対話のまちを上京から京都へ、日本へ、そして世界へ

「ミーを使うと、子どもたちは対話にはまります。自分の話したいことを聞いてもらえるからでしょう。それは日頃、家庭で、学校で、周りの人たちに自分の話を聞いてもらっていないということの表れでもあります。」と小畑さんは話します。対話をする機会は、地域の中にも個々の暮らしの中にもなかなかない状況が伺えます。一方で、「人類が対話をしたら戦争は無くなる」と対話の価値を見出す人たちもいるそうです。自分なりの解釈を入れて聞くのではなく、相手の話したいことを聞けるようになる。そのような対話が普通に行われる社会になるように、まずは「聞き語り合える上京」となるように、小畑さんは「対話之町京都ヲ目指ス上京」で活動しています。 


焼けた木材をベンチに再生〜炎のベンチ〜通りかかったら、座ってみてください

縁側のようなスペース

レポーター

田畑裕貴:同志社大学政策学部一回生
取材をしていてはじめは不安なこともありましたが、小畑さんの優しい人柄や、話し上手、聞き上手なところに助けられました!是非、心から話ができる自由な対話の場が当たり前である社会が実現してほしいです!

斉藤陽:同志社大学政策学部一回生
私は体調不良で今回の取材を実際に聞くことができず、音声データで内容を聞いたのですが、小畑さんの一つ一つ言葉をよく吟味しているような話し方に引き込まれました。対話の力に可能性を感じ、京都で対話の場がもっと広まって欲しいと思いました!

堀圭吾:同志社大学政策学部一回生
今回のアカデミック・スキルの授業を受けるまで、このような活動を知らなかったのですが、授業を通して、小畑さんの意見を聞いたり、対話の場を作る意義を直接聞くことができて本当にためになったと感じました。これからは、自分の住んでいる街にどのような活動があるのか、区役所に行ったり、インターネットで調べてみて、今度は独自に活動に参加してみたいと思います。本当に素晴らしい機会を得ることができて良かったです。

水田隆登:同志社大学政策学部一回生
今回アカデミック・スキルの授業を通して小畑さんに取材させて頂いたことで、何が課題で何が足りてないか、何が大事かを見極めて行動を起こす必要性や意義について学ぶことができて良かったです。自分も小畑さんのように能動的に行動を起こしたいと思えました。貴重な機会をありがとうございました。

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