「西陣お助け隊」～伝統の技を支える仲間たち～

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西陣織は、平安時代から続く華やかな伝統織物です。京都・西陣の地で作られる先染めの紋織物で、職人たちが「機（はた）」と呼ばれる織機を使い、手間ひまかけて丁寧に織り上げています。
織物の種類によって使う織機もさまざまで、昔ながらの手織り機もあれば、明治時代に導入されたジャカード機などの自動織機もあります。どの織機でも、織り始める前の準備作業がとても重要で、その積み重ねが西陣織ならではの美しさを生み出しています。
しかし、その伝統を支える裏側では、さまざまな課題もあります。中でも深刻なのが、織機の修理やメンテナンスができる人材の不足です。今回は、そんな課題に対応するために誕生した「西陣お助け隊」について、メンバーの一人である中村亨（なかむらとおる）さん（中村織物店4代目店主）にお話を伺いました。

■「西陣お助け隊」誕生の背景

これまで織機の部品販売や修理は、「機料店（きりょうてん）」と呼ばれる専門店が担ってきました。かつて西陣地域には数十軒の機料店がありましたが、現在も営業しているのはわずか3軒ほどに減ってしまいました。
一方で、多くの織機は長年使い続けられており、不具合や修理のニーズは高まっています。そんな中、長く西陣のものづくりを支えてきた機料店が高齢化により廃業するケースが増え、西陣織工業組合ではその技術を引き継ぐ動きが始まりました。
こうして2020年に「ものづくり事業部」が発足し、織り手たちのさまざまな声が寄せられるようになりました。「織機が壊れたら仕事をやめざるを得ない」「重い部品の取り付けが難しくなった」などの悩みです。そうした声に応えるため、2025年3月、「西陣お助け隊」が誕生しました。

■活動内容

西陣お助け隊は、西陣織工業組合に加盟する企業の有志13名で構成されています。活動内容は、織機のトラブル対応や修理などを有料で行うこと。組合に寄せられた困りごとに応じて動きます。
特に高齢の職人が対応しにくくなった、金属部品の脱着といった力仕事も引き受けています。こうした活動を通じて、職人同士の横のつながりを強め、技術の向上や後継者への技術継承にもつなげていくことを目指しています。
立ち上げにあたって実施された研修会では、力織機（りきしょっき）の使い方について若手職人を中心に多くの参加があり、関心の高さがうかがえました。

■中村亨さんの思い

「トラブルはないに越したことはありません。でも、何かあったときに自分で対処できる力も必要です。また、トラブルの原因を明確にし、それを共有することで人材育成にもつなげていきたい。そして、機料店の仕事にもつながるよう、うまく連携していきたいと思っています」と中村さんは語ります。

中村さんの工房では、1975年製の織機が今も現役で活躍しています。50年近くにわたって、美しい絹織物を織り続けてきたこの機械は、中村さんにとってかけがえのない存在です。
「もちろん、新しい機械を導入する会社もありますが、西陣織の世界では個人事業主も多く、同じ織機を長年使い続けている人がほとんどです。私自身も、この織機だからこそ生み出せる西陣織の魅力があると感じています。」

■西陣の未来のために

では、私たちにできることは何でしょうか？
業界内でも本業があることに加えてお助け隊として活動することで、若手職人の手が止まり、生産効率が下がってしまうのではと心配する声もありますが、お助け隊の存在が技術の維持・継承につながることは間違いなく、次世代の育成等につながるようにうまく循環するしくみがあればなお良いのかもしれません。
西陣織の魅力を多くの人に知ってもらい、需要を高めていくことが大切です。職人たちが安定した収入を得られ、安心して技を磨ける環境づくりのためにも、「西陣お助け隊」とともに、西陣全体を盛り上げていきたいですね。