先人が見た風景に魅せられて
      ~「古地図の魅力にはまる楽しさ」を伊東宗裕先生に聞く~

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いにしえからの歴史と文化が伝わる京都。当時の景色を思い浮かべる方法に古地図を使うというものがあります。わたしたちの暮らす京都の古地図について知りたいと思い、古地図研究第一人者の伊東宗裕先生にお話を伺いました。

伊東先生は、開館当初から勤務されていた京都市歴史資料館を今年退職、現在、立命館大学などで教鞭をとっておられます。また、古地図に関わる本も数多く出版されています。

先生が古地図を研究されるようになったのは、歴史史料のひとつとして古地図を取り扱ったのが最初。実は、最初は古地図を専門に扱おうと思っておられなかったようなのですが、次第に古地図の魅力に惹かれ研究対象となり、現在は、古地図研究の最前線で活躍されています。

古地図が一般に普及するようになったのは、江戸時代からということです。江戸時代になると世の中が平和になり、人々の「自分たちの生活する周りのことを知りたい」という関心が芽生えたためと考えられているそうです。

古地図と現在の地図にはひとつ大きな違いがある、と先生はおっしゃいます。それは、古地図は書いている人の目線で書かれているということです。そのため、描き手の興味のあるところは細密に描かれ、関心の薄いところの描写は粗くなっているのだそうです。

なるほど、実際に古地図に目を向けて見るとたしかに地図の中心部分は一軒ごとに細かく区切られて描かれていますが、中心を外れると、描かれていない場所などが少なくありません。現代ではよく知られている場所でも、古地図を覗いてみると省略されている場所もあります。古地図は、描いている人が書きたいことを自由に表現できるということがわかります。

古地図というものは現代まで残りやすいものなのか伺ってみると、伊東先生は地図というものは折り畳んで何度も使うので傷みやすく、たとえ残ったとしてもきれいに残ることは少ないとおっしゃっていました。伊東先生が一番お気に入りの古地図「新改内裏之図(延宝5=1677)年」は、折り目がほとんどなく、当時の色も鮮やかに残っていて、このような状態で残ることはとても珍しいそうです。

古地図に使われる色もさまざまです。周辺の山は緑に塗られ、貴族の屋敷はそれぞれの位に応じて色分けされています。古地図は、ある種記号化され、使い手にわかりやすいように工夫もされているのです。

伊東先生おすすめの「新改内裏之図」は京都市歴史資料館に保管されています。ここでは、6人の専門家の方が働いておられます。伊東先生に京都市歴史資料館の上手な使い方を聞くと、「歴史資料館にいる専門家は調べることに関してのエキスパート、疑問に思ったことを聞けば調べて教えてくれる。ぜひ歴史資料館を利用してほしい。」と教えていただきました。

「古地図」という言葉は、たまにテレビや新聞などで私たちがなんとなく耳にする言葉のひとつです。しかしその深い意味まではなかなか普段知る機会というものがありませんでした。専門的な話までしてくださったのですが、歴史に詳しくない人にとっても伊東先生の話はわかりやすく、また面白いものでついつい時間が経つのを忘れてしまいました。

普段、わたしたちが目にする地図には、どれも多くの情報が載り同じような形態なので、地図に特別な思いを抱くことはほとんどありません。しかしたまには古地図を目の前にして、いにしえの都を思い浮かべ、楽しんでみてはいかがでしょうか。

レポーター

布山雅裕

立命館大学 文学部  都ライト実行委員会 副代表

都ライト実行委員会として、減少する京町家の魅力を多くの人に感じてもらえるよう日々活動しています。町家をライトアップしている中で、都ライトが開催される上京区についてよりくわしく知りたいと思いレポーターのひとりとして参加させていただきました。いままでは町家の視点から地域の魅力を感じていましたが、取材を通していままでとは異なった視点から地域の魅力を感じることができ驚いています。

今回、一緒に伊東先生を取材してくださった、津田凌介さんも感想を寄せてくださっています。

大谷大学4回生 津田凌介

伊東先生とのお話の中で私が1番感じたのは、古地図を史料として、古文書と同じように扱っていると感じました。それは、古文書に書かれていることのみを読み取るのではなく、視点を1歩引いて、書かれてないことも読み取るということではないのだろうかとも感じ、このことは私自身、史料を読む時に感じていることでした。地図を見た時に、ここに何何があるという事に考えが行きがちですが、それと同時に、どうしてこれができたのか、どうしてこれが書いてあって、これが書いていないのか。このことが重要ではないかと感じました。このお話の中で、私の中でもう1度、史料を読む時に意識をしなければならないと感じました。

また、5月21日に伊東先生の案内により行われた京都御苑フィールドワークに参加された越野友香梨さんの感想が届いていますので一緒にご紹介いたします。

*このフィールドワークに関する記事はこちら
 → http://www.kamigyo.net/public_html/event_report/report/20160604/index.html

京都府立大学3回生 越野友香梨

京都御苑を探索したのは今回で2回目である。以前に初めて訪れた時は、ただただ広い砂利道と緑の自然豊かな部分があるだけだという印象を受けただけだった。今回はまち歩きに同行させてもらい、伊東先生のお話を聞きながら歩いたわけだが、1回目の時と全然違う景色を見ることができた。その中でも私が一番興味深かったのは神社の成り立ちである。御苑内にはいくつか池のそばに神社があって、それらが元々は公家の屋敷内のものであったと知ったときは驚いた。それが歴史の変遷の中で神社だけが露出し今の姿となって残っているそうだ。これらを踏まえてもう一度全体を見渡してみると、それまでは池と神社があるただの風情のある景色であったのが、ぐっと歴史的な意味を帯びて目に留まり時代の重みを感じられた。今度はこのまち歩きの途中で紹介してもらった冬の時期に訪れたいと思う。

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