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進化するNPO-その2 ギアチェンジと進歩が「進化」の要
NPO法人 ANEWAL Gallery

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NPO法人ANEWAL Gallery(アニュアル ギャラリー、以下アニュアル)は、ディレクター、デザイナー、アーティスト、学生を中心に2004年に任意団体でスタートし、2013年にNPO法人となりました。アートやギャラリーの社会的役割を、「視点の発信」と「人と人、人と場所を繋げること」と考え、社会とアート、社会とデザインの関わり方・在り方をまちの中の様々な場所で、そこに暮らす人々との対話の中から探り、企画実践していくこと(=「外に出るギャラリー」)をコンセプトにしています。 アニュアルは、最近法人の拠点を京町家から路地中へ移転し、さらに新たな動きをしています。新型コロナウイルスの中でもイベントを仕掛けていく攻めの姿勢を見せるアニュアルは、明らかに進化していると言えます。今回のインタビューにてアニュアルの代表理事 飯髙克昌さんに進化のポイントをお聞きしたところ、「ギアチェンジ」と「進歩」というキーワードを頂きました。


事務所で作業するアニュアルのメンバー

<ギアチェンジは二度あった>

団体として一度目のギアを変えるタイミングは2013年、団体がNPO法人化した時でした。それまで約10年間任意団体としてAIRや都ライト等に携わっていましたが、団体活動は気が向いたときにするというペースでした。飯髙さんが東京から京都へ完全に拠点を移すことと、メンバー全員が学生から社会人となり、続けていくならば活動に本腰を入れようということで法人化しました。
二度目のギアチェンジは、2017年、法人拠点だった京町家から「移転を決めた時」です。まずは移転先探しを自分たちで進め、翌年、建物情報がありそうな人に声を掛け、情報が入り移転先を決め、準備等を経て2019年に移転が完了しました。「移転を決める」ことで建物情報とそれに伴う各地の地域情報が入り、その縁で新たな拠点が生まれ、新たなプロジェクトが動き出しました。そういう意味で移転をした時ではなく「決めた時」がギアチェンジのタイミングなのだそうです。



2019年に移転した先のアニュアルの事務所で飯髙さんにお話しを聞く

<上京区内の活動団体のネットワークをつなげる>

飯髙さんいわく、かつてアニュアルには、上京区にどんな団体があるのか、何をしているか知らないという課題がありました。実は、その課題はアニュアルだけのものではなく、上京区内の他の団体も同じような傾向がありました。2015年アニュアルは上京区内の他団体と一緒に、上京区を活動の中心とした個人や団体、NPO、企業によるゆるやかなネットワークである「上京クリエイティブネットワーク」を作り、それぞれが持つノウハウや経験、専門知識を共有し、上京の魅力の再発見や町家活用、地域活動の連携等上京の新しいカタチを育むことを目的としたプラットフォームとしてスタートしました。その主催プロジェクトとして「上京OPEN WEEK(以下、O.W.)」を毎年11月頃開催し2019年まで実施しました。

O.W.は1週間程度の期間に(2019年は約1か月間)、人と人、人と場を繋げ新たなアイデアと活動を生むためのイベントをまとめてパンフレット等で紹介し、人の流れをつくり上京の団体同士を繋げ、上京の一体感を出しています。主催・共催事業を含めた参加イベントは2016年で22件、2017年で26件、2018年で41件、2019年で68件(上京区140周年記念事業11件含む)と年々増えていきました。


O.W.のパンフレット(2016~2019分)

2019年実施のO.W.カフェの様子

更に、O.W.を盛り上げるために期間前、期間中に開催したOPEN WEEK Cafeでは他団体と知り合うきっかけを作り、O.W.に参加する団体同士の連携を強めました。それをきっかけとして新たなまちあるきイベントができるなど、点と線が見事につながってくのがよくわかる期間でした。O.W.を通してアニュアルとつながる人、地域、団体が増えたと同時に、アニュアルの事を知る人も増えていきました。このことを飯髙さんはアニュアルの大きな「進歩」だといいます。上京にとっての「進歩」でもありますね。

<活動テーマの優先順位が町家から路地へシフトする>

ところで、自ら改修工事を行った築120年の京町家にアニュアルの事務所を置いていた頃は、「京町家の保存と活用」活動が特徴的でした。最近のアニュアルが主催するプロジェクトやイベントは路地に関わるものが多いです。その理由を飯髙さんにお聞きしました。
アニュアルには活動テーマの大カテゴリが「地域文化」、「国際交流」、「都市・公共空間」の三つあります。「都市・公共空間」の中に「町家」、「路地」等の小カテゴリがあります。それぞれのテーマは都度、状況によって優先順位が入れ替わります。


図1活動のテーマ概念図

2017年、アニュアルは法人拠点を町家から移転すべく動いていた際に、移転先の候補として「路地中」を検討していました。路地をテーマとして活動ができるかどうか、暗中模索の中、同年9月上京区役所主催の上京区民まちづくり円卓会議拡大会議「上京!MOW」(以下、上京!MOW)で、アニュアルは「路地にまつわる様々な視点と活用について」というテーマを提案し興味を持つ人を募りました。地域の方や他団体が集まり、路地は災害・火災時の不安はある一方、子どもの遊び場として安心安全、プライベート空間としての性質から侵入者の抑止力になる、生活文化が豊かといった視点や情報を得ることができました。これにより地域の方は路地に大きな関心をお持ちであると確信したのです。また、他団体等からはO.W.にて路地の情報や活用について様々な協力が得られました。活動テーマと地域の関心・理解が合致し、情報、協力者、資源(拠点等)が得られるという状況が生まれ(図1参照)、本格的にアニュアルの活動テーマ内で、優先順位が「町家」から「路地」にシフトしたのです。


2017年9月4日開催、上京!MOWでの話し合いの様子

その後、地域の路地空間の調査等を実施し、その延長線上で生まれたのが「こどもの路地実行委員会」とプロジェクトの一つである「ろじカル」です。上京、西陣にある多くの路地には、災害時の避難経路確保の問題や現行の建築基準法に適合しない再建築不可物件という課題はありつつも、空間を共有する者同士のコミュニティの力や子どもにとっての安全性と、若者、子育て世代に優しい家賃であるという側面があります。その側面から路地を地域振興のための「資源」とし、路地のイメージの向上と活用促進が地域活性につながると考えるようになりました(参考:「ろじカルって」https://www.roji-cul.net/about/)。
「こどもの路地実行委員会」は、子どもたちがかつて路地で走り回って遊んでいたという地域の人の話から、子どもたちが路地で遊ぶ企画である「路地であそぼ」をこれまで3回実施しました。実際に遊ぶ子どもたちを見て、地域の人々からは「子どもの声が聞こえて活気がある」、「昔はよく遊んでいたのに最近はあまり見ないので寂しい」などポジティブな声があり、一方の子どもたちは公園ではないところで遊ぶことに新鮮さを感じていたようです。「今度はいつやるの?」という感想が印象的でした。


2018年6月2日実施、路地であそぼの様子

また、大人対象のイベントでは2017年O.W.で開催した京都西陣×東京墨田交流事業の「ドンツキクエストin上京」や「ドンツキ会議」で、東京都墨田区向島でドンツキ(行き止まり)をまちの個性として肯定的にとらえ向き合うドンツキ協会の方々からドンツキや路地の楽しみ方を紹介してもらいました。プライベート空間でもある路地にはお行儀よく「お邪魔します」の精神でそっと入ることも学びました。

017年11月11日ドンツキ会議の様子(ANEWAL Gallery現代美術製作所にて)

<拠点が増えたことは「進歩」>

2020年3月、コロナ禍の最中にアニュアルの新拠点「西陣路地まち工作室KRAFTERIA」が完成、OPENしました。

KRAFTERIAの外観と内側

写真からもわかるように、路地奥の町家を活用しており、デジタル工作機器(レーザーカッター、カッティングプロッター等)、木工系工具(丸ノコ、ジグソー等)、 紙工系道具(紙折り機、裁断機等)等、幅広い道具がそろっています。道具を使いたい一般の方の利用を見込むほか、アニュアルのAIR(Artist in Residence)事業で 在京する海外アーティストの制作時の利用、その他アニュアルのプロジェクトに関連して使用されます。ただ、工作のみを目的としているわけでもなく、 ワークショップ等の「場」というスペース活用の使用も想定しています。例えば、2021年1月16日に実施したオンラインイベント 「路地TV(世界各地、日本全国の路地にまつわる動画50番組を配信したオンラインイベント)」では、KRAFTERIAを放送局としていました (参照:路地だらけのネット配信番組「路地tv 2021 from 西陣」視聴レポート(http://www.kamigyo.net/public_html/event_report/report/20210308/)。

その2年前の2018年、Kyoto Kinugasa Art Residence for Community(KKARC)がAIR(Artist in residence)事業で入洛する海外からのアーティストが宿泊し、地域の人と交流する場所としてOPENしています。飯髙さんは、これまで地域の中で宿泊する場所、制作する場所を都度見つけつなげてすすめてきた事業、プロジェクトが今後は自前の拠点を使用できるようになったのは大きな「進歩」だといいます。

KKARCの外観の内部の庭

参考
KRAFTERIA:https://krafteria.anewal.net/
KKARC:https://kkarc.anewal.net/

<プロジェクトと地域と団体と人と場>


図2 アニュアルギャラーの拠点と携わるプロジェクトの相関図

最後に、アニュアルの拠点、プロジェクトと、地域、団体、人、場との関係性を、図2を基にご紹介します。これまでもアニュアルの事業、プロジェクトは、地域、人、団体とつながり連携の中から生まれ、実施してきましたが、人や団体が出会い交流する「場」がO.W.等で顕在化し、さらなる地域、人、団体の結びつきをつくるようになると、「場」きっかけで新たな協働事業・プロジェクト、協力関係が生まれてきました。各事業・プロジェクトもそれ単体や単年度で完結せず、それをきっかけとして、次への展開を見せています。アニュアルの四拠点はそれぞれの役割の他に、「場」としての役割もあります。アニュアルの関係する地域は上京区という行政区にとどまらず、西陣という産業、生活文化圏へ広がり、西陣のブランディングや活性化の一翼も担っています。
また、各事業、プロジェクトも相互に関係し合うことで、新たな視点を地域にもたらしています。例えば、AIRに参加して京都に来ていたフランス人映像作家のトマ・キメルラン・プパールさんは、京都にいる間、西陣の路地を散策し飯髙さんから路地の奥深さを聞いていました。アニュアルが「路地TV 2021 from西陣」を進めるにあたり、トマさんの弟がフランスのリールにあるCurée(クレ:旧織物工業地域にある路地奥の工人の居住空間)に居住していることから、フランスの路地奥の生活についてドキュメンタリー映像をつくることに思い当たりました。トマさんが制作した映像で紹介するクレの歴史や現状は、西陣の状況と重なることが多く、調べたトマさんはじめ、飯髙さんも非常に驚いたそうです (“Curée”フランス リールの路地 https://www.tv.roji-cul.net/post/_c001)。トマさん自身がクレの路地事情について再認識したように、京都に住む私たちにとっても、西陣織と路地の関係性を再認識させる作品だと思います。

参考:路地TV2021 from 西陣 https://www.tv.roji-cul.net/

左:路地TV内の番組でインタビューするトマさん、 右:トマさんに話をお聞きする

このように、飯髙さんの言う「ギアチェンジ」と「進歩」の結果、アニュアルは多拠点、複数プロジェクトを進めるNPO法人として「進化した」と第三者からは見えるし、地域(上京区、西陣)や他団体にも大きな影響を与えたと言えます。面白いのは、「ギアチェンジ」は高速だけでなく、力強い低速にもなることを意味します。ですから、今後アニュアルが速度を落とすことがある場合、新たな力を蓄えている期間なのだと理解しやすいですね。

【参考】特定非営利活動法人ANEWAL Gallery
https://www.anewal.gallery

レポーター

松井 朋子(まつい ともこ) 京都市まちづくりアドバイザー

これまでアニュアルの様々な事業、イベントに参加者として6年間関わってきました。記事を書くにあたり、私にとってもアニュアルの経過を振り返りながら、上京の状況を振り返る良いきっかけとなりました。それにしてもあっという間の6年間でした。写真は、2020年2月9日開催の第40回地域をつなぐ西陣マルシェ内、アニュアルが開催した路地カフェ屋台にて。

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