上京区には、西陣織に代表される「ものづくり」の伝統と、路地に根付いた人々の暮らしの文化が、歴史とともに今も息づいています。こうした上京の魅力を学生の視点で見つけ、広く発信することを目的に、上京区民会議と上京区役所は、「おこしやす上京Season 3」の取組の一環として、大学生を対象としたまち歩きを行いました。
「一条通」にスポットを当てて歩く
実施日の12月6日(土)は、青空が澄み渡り、頬に当たる風もひんやりと心地よい1日でした。「上京横断!百鬼夜行 “一条通”を歩く」と題して行われたまち歩きは、昼の部(13時〜15時)と夜の部(16時〜18時50分)に分かれており、昼の部に9名、夜の部に17名の大学生が参加しました。1回生から4回生までが集う大学生に共通していたのは、みなさん他府県出身だったこと。
「とすると、この辺りの地名や通り名は馴染みがないかな」と、案内人を務めた冨家裕久(とみいえひろひさ)さんは学生さんに尋ねます。頷く学生の反応を見て、冨家さんは地図を示しながら、平安時代から室町、安土桃山、江戸時代、そして近現代に至るまでの一条通周辺にまつわる歴史を、時代ごとの特徴を捉えて分かりやすく伝えました。


今回のまち歩きで注目した「一条通」は、平安時代に安倍晴明の邸宅があったとされ、豊臣秀吉が聚楽第を築いた場所としても知られています。「一条通は、あの世とこの世が交差する場所として、妖怪や幽霊にまつわる話が数多く残っています。一条通を境にして南側は文明の世界、北側は魑魅魍魎(ちみもうりょう)とした外界だったわけです」と冨家さんは語ります。それを聞いた学生たちは、後に訪れた大将軍商店街で妖怪モニュメントを目にし、歴史的背景を生かした地域のまちづくりを実感していました。


▲晴明神社内にある昔の戻橋の欄干を見た後で、現在の戻橋へ向かって伝説を聞きました
路地が伝える歴史と暮らし
通りを歩くと、京町家や路地が今も残り、京都らしい景観が見られます。聚楽第の名残とされる石垣や、住民が共同で使ってきた井戸、路地の一角に祀られたお地蔵さんなどから、長い歴史の中で受け継がれてきた人々の暮らしが身近に感じられました。
一方で、路地の多い地域は防災面での課題も抱えています。正親学区では、昔ながらの街並みを大切にしつつ、防災意識を高める取組として路地に名前を付け、住民や来訪者、消防署が位置を把握できるように工夫していることも紹介されました。


地域の人たちとの触れ合い
まち歩きの途中で、いくつかのお店や工房を訪ねました。ご紹介いただいたのはNPO ANEWAL Gallery代表理事で、アートディレクターを務める飯髙克昌(いいたか かつまさ)さん。今回のまち歩きでは、「歴史が私をクリエイティブにする」というコンセプトを掲げてコースを決める段階から協力いただき、店主さんや職人さんとのご縁をつないでいただきました。
参加した学生にとっては、見るもの聞くこと多くのことが新しい発見の連続だったようです。
例えば、テレビのない時代の娯楽として芝居が人気だった時、千本商店街界隈には芝居小屋や映画館が30軒もあったこと、50年ほど前まで市電が通っていたこと、今は飲食店が増えて賑わいをもたらしていることなどの変遷を伺って、学生から「話を聞くことで、まちの景色が変わっていく」との声が聞かれました。
また、西陣織の繊細な手仕事を間近で見た学生は「写真のように美しい」と驚き、職人さんが15歳から仕事にひたむきに取り組まれてきた人生に触れ、深い感動を覚えていました。





歩いて感じる歴史と文化の宝庫 上京
京町家、看板建築、お茶屋建築など、建築家の冨家さんならではの街並み解説を聞きながら、一条通、千本商店街、北野商店街、大将軍商店街へと歩き、大将軍八神社では神主さんから宝物庫「方徳殿」を案内いただきました。平安から鎌倉時代に造られた神像を始め、安倍晴明に関する資料、江戸幕府の天文方を務めた渋川春海の天球儀などが身近に感じられるように展示されており、学生たちは一つひとつ見入っていました。
北野天満宮に着く頃にはすっかり日も暮れて、ライトアップされた境内で太閤井戸を見学し、安土桃山時代に思いを馳せました。



夜景に乾杯、語って乾杯
まち歩きの締めくくりは、一般公開されていないとみやビルディングの屋上から眺める京都の夜景です。「すごい!」と感嘆の声が上がりました。
「上京は、知れば知るほど面白いまちです。歴史が積み重なり、それぞれの時代を切り口にして、まちを見る楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。住み良いところなので、このまちにぜひ住みついてください」と冨家さんが伝えると、学生たちからは「近くに住んでいるけれど、知らないことばかりでした」「まちのことを知っている人と歩くと、何倍も楽しいです!」との感想が寄せられました。
その後の交流会は、まちを歩いた仲間同士、すっかり打ち解けた雰囲気で始まりました。まち歩きで訪れた店主さん、職人さんも交えてみんなで乾杯し、商店街で見つけた惣菜や和菓子、手作りのおでんをいただきながら、あちこちで話に花を咲かせました。楽しい時間はあっという間。予定していた1時間ほどの交流会は、終電が気になる時間まで続きました。こうして、上京の歴史と暮らしを五感で感じる一日は、参加者にとって忘れがたい経験となりました。



平野さんを取材させていただいたレポートや、西陣ろおじと西さんのお話、飯髙さんが講師を務められた講座について伝えているカミングレポートをご紹介します。よろしければ合わせてご覧ください。
○「感性のリレー~綴織職人 平野喜久夫さん~」
https://www.kamigyo.net/public_html/person/zukan/20170210
○「「西陣ろおじ」から学ぶ新しくて懐かしい路地のカタチ」
https://www.kamigyo.net/report/nishijin-rooji
○「西陣歴史の町協議会主催 再発見上京連続講座 交流で読み解く西陣―路地・歴史・文化―」
https://www.kamigyo.net/report/saiken-kamigyo-nishijin-koza
レポーター
まちづくり協働コーディネーター
冨家さんと飯髙さんに案内していただきながら一人ではなかなか訪れることのない道や場所を巡り「知らなかった」「ワクワクが止まらない」と伝える学生さんと一緒になって、私も平安時代から現代までの時間旅行を堪能しました。上京のまちを今年も歩いて、たくさんの人と出会っていきたいです。