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日本でここだけ!? 「西陣をクラフトビールのまちへ」の理由を探りにいってきました

西陣エリアには、実は3箇所のクラフトビール醸造所と「クラフトビールの聖地」と言われる酒店があることをご存知ですか? 徒歩圏内にこんなに密集しているのは日本でも西陣だけ! 今回、この4社が合同で「クラフトビールのまち」の実現を目指して開催している「西陣 CRAFT BEER TOWN」の取材に行ってきました。

年始のお忙しい中、実行委員会3名の方にインタビューさせていただきました。

山岡茂和さん(山岡酒店)
辻本大和さん(ウッドミルブルワリー・京都)
野村尊実さん(西陣麦酒) (最後には店舗紹介もあるのでお楽しみに!)

徒歩圏内に4拠点! この密集度は、実は日本で3本の指に入ります

「西陣 CRAFT BEER TOWN」は、西陣を拠点とする3つの醸造所(ウッドミルブルワリー・京都、西陣麦酒、Bighand Bros. Beer)と、地ビールの聖地として知られる「山岡酒店」がタッグを組んだプロジェクトです。単なるイベントの枠を超え、このエリアを「クラフトビールのまち」として盛り上げることを目的としています。

具体的な活動としては、2024年度から開始された各店舗を巡るスタンプラリー、ビールを通じた学びの場「クラフトビール大学」、2025年から始まったお寺を会場にした大規模な祭典「西陣オクトーバーフェスト」など多岐にわたります。

職人の街・西陣らしい「こだわり」をビールという形にして発信することで、地域住民だけでなく観光客にも新たな街の楽しみ方を提案しています。4社が手を取り合うことで、1社では成し得ない大きな熱量を生み出しているのが、この活動の大きな特徴です。

「西陣 CRAFT BEER TOWN」MAP
▲「西陣 CRAFT BEER TOWN」MAP
引用:https://nishijin-craft-beer-town.com/

きっかけはビール好き同士の雑談から。おもしろいをカタチに

この構想は、ビジネスライクな戦略からではなく、日頃の「顔の見える関係」から自然発生的に生まれました。以前から4人は、醸造所が山岡酒店へ納品に訪れたり、お互いの店に行き来したりする仲。

特に面白かったのが、税務署での研修会でも顔を合わせていたということです。お酒を扱う業種は、保健所ではなく税務署が管轄。税金だけでなく造り方の講習もあり、そこで切磋琢磨する仲間でもあったのです。また、様々なクラフトビールのイベントなどでも同時に出店しているといった機会も多くあります。

そんな交流の中で、「一緒にスタンプラリーができたらおもしろいね」という何気ない会話がきっかけとなり、このプロジェクトが動き出しました。西陣というコミュニティの深さと、同じ志を持つプロフェッショナルたちが同じエリアに集まっていたからこそ実現した、まさに西陣ならではの「繋がり」から生まれた企画なのです。

インタビューの様子
▲インタビューの様子

「地ビール」と何が違うの? プロに聞く、一杯のグラスに詰まった深い歴史

「地ビールとクラフトビール、何が違うの?」という疑問に対し、3人からは歴史と文化が詰まった答えが返ってきました。

クラフトビールのルーツは、アメリカの禁酒法解禁後。大手ではない小規模な醸造所が生み出す個性的なビールを指したのが始まりです。一方、日本ではかつて「地ビール」と呼ばれ、その土地の風土や特産を活かした地産地消の色合いが強いものでした。近年、大手メーカーも独創的な商品を「クラフトビール」として販売したことで言葉が広まり、現在では両者の境界は緩やかになっています。

昔ながらの地ビールも、今ではクラフトビールと称されることが増え、ファッションと同じように時代の変化とともに名称も変わってきているようです。歴史の重みや時代の変遷が一杯のグラスに凝縮されていることを知り、ビールを見る目が少し変わるような深いお話でした。

辻本大和さん(ウッドミルブルワリー・京都)
▲辻本大和さん(ウッドミルブルワリー・京都)

ビールを相棒に「まちあるき」。スタンプラリーに込められた、西陣への愛

スタンプラリーを始めた当初の目的は「自分たちの店に来てほしい」という思いでしたが、計画を進めるうちに「西陣という街全体の魅力を知ってほしい」という願いへと進化していきました。西陣には、北野天満宮や晴明神社などの観光スポットだけでなく、歴史ある神社仏閣、和菓子店や漬物店をはじめとした老舗、そして情緒溢れる路地や町家の街並みが今も息づいています。

「地ビール」がその土地の文化を液体で表現するように、ビールを入り口にしてこの街を歩き、西陣ならではの空気感に触れてほしい。「クラフトビールだけじゃない」という想いは、地域への深い愛着そのものです。

スタンプを片手に街を巡ることで、普段は通り過ぎてしまうような小さな発見や、西陣が積み重ねてきた歴史の厚みを感じてほしいという願いが込められています。

野村尊実さん(西陣麦酒)
▲野村尊実さん(西陣麦酒)

クラフトビール文化を次世代へ! 学生と醸す「クラフトビール大学」が、上京区をもっとおもしろくする

「今ビールを好きな人だけを相手にしていては廃れていってしまう」。
そんな危機感もあり、「若い世代にクラフトビールを知ってほしい」「身近に感じてもらいたい」、そして「ビールの作り手の思いや味わい深い美味しさ」に触れてもらいたい」。そんな思いから生まれたのが、クラフトビール大学です。
西陣の歴史が脈々と受け継がれてきたように、ビールの文化も次世代へ繋げたいという強い思いがあります。

昨年度は2日間の開催で、30名以上の大学生が参加。講師を務めた山岡さんは、学生たちの熱心な姿勢に手応えを感じたそうです。多くの大学が集まる上京区という立地を活かし、今後も継続したいという意欲的な言葉が印象的でした。

講師を務める山岡茂和さん(山岡酒店)
▲講師を務める山岡茂和さん(山岡酒店)

今後は、クラフトビールの講義だけでなく、学生たちの感性を取り入れたイベントや協働プロジェクトも検討していきたいとのこと。若者のエネルギーと「クラフトビール」という文化が混ざり合うことで、西陣にまた新しい風が吹こうとしています。

「クラフトビール大学」の様子
▲「クラフトビール大学」の様子

お寺で乾杯!? 「西陣オクトーバーフェスト」が繋いだ、まちと人とご縁のカタチ

「西陣 CRAFT BEER TOWN」の象徴的なイベントとして、妙覺寺という歴史あるお寺を舞台に「西陣オクトーバーフェスト」が開催されました。お寺でビールという意外な組み合わせですが、会場には4社だけでなく、京都内外の醸造所や飲食店、さらには障害福祉施設も出店。子ども向けの縁日ブースやライブパフォーマンスもあり、ビール好きから家族連れまでが笑顔で交わる光景が広がりました。

「西陣オクトーバーフェスト」の様子
▲「西陣オクトーバーフェスト」の様子

これらの取り組みを通じて、参加した4社は「個別で活動するよりも、協働することで生まれる相乗効果」を強く実感したそうです。ビールというツールが、お寺、地域、飲食店、福祉関係者、そして住民や来場者を繋ぎ、まちの中に新しいご縁が生まれています。

選りすぐりのビールで乾杯
▲選りすぐりのビールで乾杯

今後の展望として、世代を超えた多様な人たちが混ざり合い、化学反応を起こしながらまちを盛り上げていく。その中心にあるのは、一杯のビールから始まる「人のつながり」です。実行委員会の皆さんの情熱が、西陣をよりあたたかく、活気あるおもしろい場所へと変えていくワクワクする未来が見えた取材となりました。

会場では立命館大学軽音楽部によるライブパフォーマンスも
▲会場では立命館大学軽音楽部によるライブパフォーマンスも

【番外編】お酒をあまり飲まない…私が感動。クラフトビールの魅力

実は私、普段はお酒を飲む機会が少なく、クラフトビールも初心者の「超」が付く素人。そんな私が取材してもよいのだろうかと思っていましたが、お尋ねするとやさしく熱くプレゼンしてくださいました。

日本酒やワインの世界で金賞を獲ったものは一本数万円以上することもありますが、ビールなら世界最高峰の味が数百円から千円程度で楽しめるということを聞いて、興味津々。さらに醸造所では、時には造り手(ブルワー)から直接こだわりを聞きながら、その土地の風土に想いを馳せながら飲むことができるということで、クラフトビールの見方が変わりました。あっという間に、唯一無二の味わいと、その背景にある「まち・人・ご縁」をまるごと体験してみたくなってきたのでした。

一人でふらりと訪れる人も多いと聞き、敷居もグンと下がりました。今度は取材ではなく、一杯のビールが生み出す物語を味わいに訪れたいと思います。

山岡茂和さん(山岡酒店)
▲山岡茂和さん(山岡酒店)

店舗紹介@西陣 CRAFT BEER TOWN

Bighand Bros. Beer(ビッグハンドブラザーズ・ビヤー)

「ビールとコーヒー。出来立ての香りが待っている西陣の秘密基地」

Bighand Bros. Beer(ビッグハンドブラザーズ・ビヤー)

智恵光院通に面した、おしゃれなカフェの地下一階にあるスタイリッシュな醸造所。奥のタップルームの手前にはコーヒーの焙煎所があり、ワクワクする非日常的な空間がひろがっています。お酒が飲める人もそうでない人も、ゆったりとした時間を過ごせます。「ちょっと一杯」が、日常の素敵なスパイスになるはずです。

山岡酒店

「初めての一杯を一緒に選んでくれる、百周年を迎えるクラフトビールの聖地」

山岡酒店

クラフトビールに興味はあるけれど、どれを選べばいいかわからない……。そんな方はまず、山岡酒店の暖簾をくぐってみてください。棚に並ぶ色とりどりのラベルは、まるでアートのよう。すべてのビールに書かれた店主さん手書きのポップは圧巻。きっと、あなたにとっての「運命の一本」が見つかる場所です。

ウッドミルブルワリー・京都

「西陣の空気まで詰め込んだ、路地裏で清らかな一杯に出会う」

ウッドミルブルワリー・京都

同志社大学新町校舎近く、静かな路地裏に佇む醸造所。西陣の穏やかな空気を映したような、料理とのペアリングも楽しめる味わいが魅力です。倉庫を改修した店内にはコタツもあって、田舎の実家に帰ってきたようなアットホームな雰囲気。散策の途中にふと見つけたい、まさに「路地裏の宝物」のような一杯に出会えます。

西陣麦酒(にしじんばくしゅ)

「西陣の町家から、手渡しで届ける温もり。飲む人も作る人も、みんなの笑顔が広がる一杯を」

西陣麦酒(にしじんばくしゅ)

地元の名前を冠したこのビールは、「福祉と地域がつながる場所」から生まれています。丁寧に、心を込めて一本ずつ作られるビールは、驚くほどまろやかで優しい口当たり。京町家を改装した店内でグラスを傾けると、街の誰かとゆるやかにつながる。人々の営みやつながり、暮らしを感じるビール体験をぜひ。

レポーター

小西秀和(社会福祉法人西陣会)<br />
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■写真撮影 山下久子
小西秀和(社会福祉法人西陣会)

■写真撮影 山下久子

「もっと西陣のことを知りたい!」という思いでレポーターに応募してから、今回が初めての取材でした。
どのお店にも行ったことがない私を、快く受け入れてくださった皆さんの懐の深さに心から感謝しています。
取材後に初めて各店舗を訪れると、お話を伺った内容を実際に肌で感じる、まさに「至福のひととき」でした。クラフトビールの美味しさはもちろん、「ひと・ビール・まち」の三位一体を丸ごと楽しむことができました。
この記事をきっかけに、足を運んでくださる方が一人でも増えれば嬉しいです。