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「つづれ織一の会」始動 西陣最高峰の技と想いを未来へつなぐ

つづれ織一の会 代表 足立 敏さん
▲つづれ織一の会 代表 足立 敏さん

西陣織の中でもひときわ高級とされる「つづれ織」。その技術を後世に継承し、新たな販路を切り拓くため、つづれ織の織元4軒が2024年2月20日に「つづれ織一の会」を立ち上げました。会では、その日を「つづれ(220)の日」と称しています。会の代表で、西陣織伝統工芸士・株式会社あだちの足立 敏(あだちとし)さんにお話を伺いました。

つづれ織とは

つづれ織の機
▲つづれ織の機

つづれ織は、自動織機や紋紙(もんがみ)を使わず、職人が糸の色を調整しながら手作業で織り進めていく織物です。グラデーションや絵画のような表現も可能で、すべてが一点物。

なかでも「西陣爪掻本(つめかきほん)つづれ織」は、職人が自らの爪をノコギリ状に削り、その爪を道具として緯糸(よこいと)を寄せていくという、世界でも稀有な技法です。身体そのものを道具とし、厳選された絹糸と織機で生み出される織物は、皇族や貴族、神社仏閣を飾る品として、長く高い評価を受けてきました。

「つづれ織一の会」立ち上げの経緯

上七軒あだち 外観
▲上七軒あだち 外観

足立さんは平成元年より家業「足立商店」でつづれ織りに従事し、平成7年に株式会社あだち代表取締役に就任。平成22年には西陣織伝統工芸士に認定されました。上七軒に店舗を構え、懐紙入れなどつづれ織に刺しゅうを加えた小物を得意とします。

百貨店などに出展するたび、足立さんが感じてきたのは「西陣織は知っていても、つづれ織は知られていない」という現実でした。「伝統がこのまま忘れ去られてしまうのではないか」という危機感から、「仲間と共に新しい販路を開拓し、若い世代が後継者として育つ環境を整えたい」と考えるようになったといいます。

こうして誕生したのが「つづれ織一の会」です。「一(いち)」という言葉には禅語の意味が込められており、万物の始まり、そして帰る場所を示す唯一のものを表しています。

活動と広がり

織機で説明をしてくれる足立さん
▲織機で説明をしてくれる足立さん

つづれ織り一の会発足のニュースは新聞にも取り上げられ、百貨店からも出展の依頼が寄せられるなど、注目が高まっています。それぞれの織元が得意とする分野を活かし、SNS発信を通じて新たな織り手が会に加わるなど、これまでにないつながりも生まれています。

もちろん、同じ織物を扱う者同士、販路が重なれば競合でもあります。しかし、互いに情報を共有し、競争力を高めながら未来へつなぐことこそ、業界にとって必要な取り組みだと考えています。

今後の展望

「多くの方につづれ織の魅力を知ってほしい。若い世代にも手に取ってもらえるようなアイテムづくりや発信を通じて、後世に残していく土台を築いていきたい」と足立さんは語ります。

ミニチュア用のつづれ織を見せてくれました。
▲ミニチュア用のつづれ織を見せてくれました。

取材の際には、機料店で展示されるミニチュアの織機のために制作された小さなつづれ織を見せていただきました。若手職人が織り上げたもので、完成したばかりの作品からは丁寧で優しい愛情が感じられました。

ミニチュアの織機のために制作された小さなつづれ織
▲ミニチュアの織機のために制作された小さなつづれ織

まずは一度、つづれ織に触れてみてください。その緻密さと美しさに、きっと驚かれるはずです。

「つづれ織一の会」

2024年2月 4軒の織元で会を結成

お問合せは 代表 上七軒あだち 075-462-7589 へ

レポーター

岡元麻有
岡元麻有

取材は上七軒の店舗へ伺いました。店内にはつづれ織の織機やパステルカラーのつづれ織に縁起物の刺しゅうがほどこされた懐紙入れなどが並んでいます。
年千年も続く伝統の技を継承される足立さんですが、とても気さくで温かく取材を受けてくださいました。つづれ織を知り、誰かのきっかけとしてつながっていくことを願います。