- 2025.10.30
- まちあるき
夜は短し出町を歩け
集合の様子
私たちは、鴨川デルタのど根性松という大きな木の下に集合し、お互いの肩にりんごを付けて、まちへと繰り出しました。
皆さま、こんにちは。おとまち委員会と申します。
私たちは、今年(2025年)の8月、お盆ど真ん中に「夜は短し出町を歩け」というイベントを決行しました。今回はそのイベントの様子を綴りたいと思います。
まず、このイベントは、小説『夜は短し歩けよ乙女』がきっかけになっています。主人公の乙女がまちを闊歩しながら、そこに住む人、そこで飲む人とつながっていくように、まちを歩いて、そのまちを知っていくことを、上京区のこの地域でできたら最高ではないかと考え、企画するに至りました。また、この小説には京都の至るところが登場しており、出町エリアもちらっと取り上げられていることから、インスピレーションを得ました。
参加者は、『夜は短し歩けよ乙女』のファンや企画者の知り合いの知り合いが誘い合い、総勢15人ほどが集まりました。
SNSでの告知が主であったため、上京区や出町エリアに全くゆかりがない人も多く、参加者の半分以上は府外の方が占め、初めてこの地を訪れる人にこの地域を知っていただく機会となりました。
まち歩きのスタートは、上京区は少し外れますが、出町エリアから徒歩10分で辿り着く、下鴨神社の「納涼古本まつり」です。
ミッションは「貴方のラタタタムを探せ。」
“ラタタタム”とは、小説の中で主人公の乙女が探していた本です。小説の舞台で、主人公と同じように好きな本を探す、いわば聖地巡礼です。
この時間に、汗をぽたぽた垂らしながら、参加者のワクワクは徐々に高まっていきました。

気づけばお昼、私たちは、出町桝形商店街に移動し、2班に分かれました。
ここからは夜まで出町桝形商店街を中心に上京区内を歩き回ることになります。
出町桝形商店街ではお昼ご飯を食べるお店をたくさんある中から選ぶことができるので、私たちは参加者に配るしおりに、おすすめの飲食店を記載することにしました。
ラーメン、餃子、寿司、そば、オムライス、カレーライス、ナポリタン、パキスタン料理…
商店街の中には個性豊かなお店がたくさんあり、参加者もどこに入ろうか迷われている様子でした。
賑やかな商店街に、私たちも吸い込まれ、各々昼食をとりました。

もう一つのお昼コンテンツとして「出汁取り体験講座」を実施しました。
出町桝形商店街内にある老舗のおだし専門店「ふじや鰹節店」さんにご協力いただき、昆布や鰹節から取るお出汁を味わう体験をさせていただきました。
参加者は20代から60代までいらっしゃいましたが、20代がほとんどで、普段お出汁をとる経験をしたことがない、ましてや一番出汁など人生で味わったことがないメンバーばかりでした。
そんな私たちに、店主と店主の奥様が、夫婦漫才を繰り広げながら、目の前でお出汁の取り方から、その味見から、手取り足取り教えてくださいました。
なぜ、お出汁取りがこのイベントに必要だったのか。
それはこのあと分かります。

商店街に体が馴染んできた頃、私たちは商店街の入口に再び集まりました。
そこで、このイベント最大のミッションが言い渡されます。
「地図にない火鍋会場を探せ。」
夜ご飯は火鍋。小説の中では、主人公の乙女に恋する青年が、とある目的のためにアツアツ・激辛の火鍋を食べるシーンが登場します。小説と同じように、真夏の夜に、汗をかきながら食べる火鍋。私たちはこれでイベントを締めくくりたかったのです。
しかし、このまちに初めて来た人たちが大半の中で、どのようにその場所を見つけ出せばよいのか。私たちは、8つのミッションを参加者に提示しました。1つのミッションをクリアするごとに、ゴールに導くヒントを1つ与えられます。
「さぁ、参加者たちよ、「出町」を歩き回るのだ!」いよいよ、メインイベントのスタートです。

少し時間が経つと、参加者から続々とミッションクリアの報告が送られてきます。
ミッション内容はというと、「数々の鯖たちを探して写真を撮れ」や「壁になぜか張り付いているエビフライのしっぽを探せ」といった商店街内の珍スポットを探すものから、上京区の北にある阿弥陀寺の中のお地蔵さんを探すもの、最難関は住宅街の中にある赤い鳥居を探すといったものなどでした。
途中ゲリラ豪雨に見舞われる中、参加者たちは、出町柳駅で雨宿りをしたり、商店街で計画を練り直したり、お昼にお世話になったふじや鰹節店さんをもう一度訪れてヒントを得たりしていたようでした。

日が落ち、雨も無事上がったところで、無事にミッションをクリアした参加者たちが徐々に火鍋会場に集まってきました。
火鍋会場は、上京区に住む人々の憩いの場となっている、喫茶yaomonさんをお借りしました。

参加者たちが扉を開くと、そこにはもう“ぐつぐつ”となっている鍋が三つ。そうです。私たちは皆が出町をさまよっている間、お昼に教えていただいた方法で出汁を取り、商店街内のスーパーゑびす屋さんで野菜とお肉をたんまり購入し、火鍋の準備をしていたのです。
まち歩きを終え、汗だくとなったメンバーが揃い、会場内は最高の熱気に包まれました。

さて、火鍋を囲みながら、皆の冒険談を聞くことに。
「ミッションの青いカバを探していたら、青いクワガタを見つけたよ」とか「赤い鳥居は結局どこにあったんだ」とか「運命の切り株を探すために、上京区を飛び出してしまったわ」とか、それはそれは珍道中の思い出話が止まりませんでした。
加えて、午前中に探したラタタタムも、紹介し合うことに。
参加者一人一人の趣味嗜好やかつての思い出がどんどん明かされていき、今日初めて会ったとは思えないくらい、各々がほぐれ、繋がり合う時間となりました。
参加者より、「とても楽しかった」「まちの人と気さくに話せる、関われる機会というものに価値を感じた」「満足感があった」との嬉しい声もありました。商店街の人の温かさや上京区の魅力を知ってもらうイベントとして、このイベントはまたこのまちで開催したいと考えています。
この記事を読んでくださった皆さま、一緒に京都・上京区を歩いてみませんか。まるであの乙女のように。
レポーター
京都に住んで5年目、鴨川近くで始めたシェアハウスに住んでちょうど1年。住めば住むほどこの地域の歴史や人々の繋がりを垣間見ることができ、この地域の面白さにハマっているところです。このイベントを通しても、より上京区やその周辺について詳しくなれた気がします。さて、今日はどのお店に行こうかな。
おとまち委員会
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