- 2026.10.20
- 上京区民まちづくり活動支援事業
- 文化
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受け継ぐ、その先へ
西陣の「今」をひらく新しいものづくり―染織文化オープンファクトリー
西陣の染織文化をより身近に感じてもらおうと、工房ツアーやトーク&座談会、自由制作、展示・販売などを行う「染織文化オープンファクトリー」。今年度の「上京区民まちづくり活動支援事業」に採択された取組で、2026年5月に開催され、多くの参加者でにぎわいました。
次回は11月28日(土)、29日(日)の2日間にあわせ学生団体「都ライト」のイベント開催エリアにある天鵞絨(ビロード)美術館で、トークイベントとワークショップが予定されています。
今回は開催に先立ち、天鵞絨美術館館長で実行委員を務める杣裕美(そま ひろみ)さんと、都ライト実行委員長の世良八玖茂(せら やくも)さんにお話を伺いました。
天鵞絨を、今の暮らしへ


まずは、杣さんが長年向き合ってきた天鵞絨について、お話を伺いました。西陣天鵞絨は、京都・西陣で長く受け継がれてきた伝統的な織物です。表面の細かな毛羽によるなめらかな手触りと、光によって表情を変える美しさが特徴です。
着物や帯、服地などに使われてきた技術が、現在ではパフやコーヒーフィルター、さまざまなコラボレーションにも生かされています。
「皆さんに喜んでもらえて、繰り返し使ってもらえるものがいい。今の社会の中で役に立つものをつくっていくことが、これからもこの技術を続けていくことにつながるのではないか」
そんな思いから、天鵞絨はさまざまな分野へと広がっています。
アーティストや写真家とのコラボレーション、天鵞絨版画、製品づくりなど、その可能性は少しずつ形を変えながら広がっています。
そこには、「伝統だから残す」のではなく、今の時代に必要とされ、実際に使われるものにすることで、技術やものづくりを次の世代へつないでいくという考えがあります。


染織文化オープンファクトリーとは

「染織文化オープンファクトリー」は、西陣の染織文化をより身近に感じてもらうため、工房を訪ね、職人の仕事を見たり、ものづくりを体験したり、つくり手や地域の人と交流したりする取組です。工房ツアーやトーク、自由制作、展示・販売などを通して、西陣の「今」と、これからのものづくりに触れることができます。
この取組のおもしろさは、工房を「見学する」だけではありません。職人の仕事を間近で見たり、一緒にものをつくったり、食事やお茶を囲んで話したり。つくり手と参加者、地域の人、クリエイターや研究者など、さまざまな人が垣根を越えて交流します。





染織文化オープンファクトリーには、染織に携わる職人だけでなく、クリエイター、研究者、学生など、多様な背景を持つ人たちが参加しました。杣さんも声をかけられたことをきっかけに、この取組に加わりました。異なる分野の人たちが集まり、伝統的な分業の枠を越えて交流する中で、天鵞絨の新しい可能性も広がっています。
西陣の染織は、長い歴史の中で専門的な分業によって支えられてきました。一方で、その分業の壁を越えて人と人が出会うことで、新しいアイデアや思いが生まれることもあります。
(オープンファクトリー5月開催写真提供| MC Chanチャン マンチン | Instagram: manchingc)
「受け継ぐ」から「ひらく」へ

「都ライト」は、京都の学生を中心に活動するまちづくり団体です。京町家のライトアップや併設企画を通して、西陣の文化や暮らしの魅力を発信しています。
実行委員長の世良さんは、都ライトでもオープンファクトリーのような取組を行いたいと考えていました。今回、実際に杣長の工場を特別に見学し、職人の仕事や天鵞絨がつくられる現場に触れたことで、「ここでしかできない経験がたくさんある」と手応えを感じたといいます。
職人にとっては日常の仕事や素材であっても、若いクリエイターや研究者にとっては「宝物」のように見えることもある。そんな出会いが、つくり手自身が自分たちの技術の価値を再発見するきっかけにもなっています。

今年第20回を迎えるイベント「都ライト’26」は、地域の方々への感謝を込め、「ともに灯し、ともに受け継ぐ」をコンセプトに開催します。
京町家のライトアップや併設企画を通して、西陣の伝統文化や伝統工芸、生活文化の価値を共有し、地域の方々がその魅力を再発見して誇りを育み、次の世代へ継承するきっかけをつくることを目指しています。
また、地域の方同士のつながりを、さらに強めていけるようなイベントにしたいと考えているそうです。
長く続いてきた技術だからこそ、外から新しい視点が加わることで、その価値にあらためて気づくことがあります。現在は天鵞絨パフ生地を通じた取組などにつながり、2025年のEXPOにも出展しました。
「継承」というと、昔からあるものをそのまま守ることを思い浮かべるかもしれません。けれど、西陣で起きているのは、それだけではありません。


受け継いだ技術を今の暮らしにつなぎ、喜んでもらえるもの、繰り返し使ってもらえるものへと変えていく。そして、人と人との出会いから新しい使い方や価値を生み出していく。
そうして「使われ続けるもの」をつくることが、技術や文化の存続につながっていくのかもしれません。
来月には、都ライトのイベント開催エリアにある天鵞絨美術館で、染織文化オープンファクトリーのお話会とワークショップが予定されています。都ライトの灯りがともるまちの中で、西陣天鵞絨の技術やものづくりに触れる。今回の企画も、地域の文化を身近に感じ、次の世代へ受け継いでいくきっかけの一つになりそうです。
西陣の「今」を知り、つくり手と出会い、これからのものづくりを一緒に考える。受け継ぐだけではない、これからの「継承」のかたちが、ここ西陣から少しずつひらかれています。
インフォメーション
『都ライト’26』
開催日時:2026年11月28日(土)29日(日)の2日間
イベント開催時間:両日10時から20時 ※雨天決行
ライトアップ点灯時間:両日17時から20時※雨天決行
会場:京都市上京区 上七軒通/五辻通・六軒町通・上立売通/浄福寺通大黒町
主催:都ライト実行委員会
都ライトInstagram:
https://www.instagram.com/miyako.light?stkn=ZjZqZjhkZ3EwNGlr&utm_source=qr
都ライトHP:
https://miyako-light.com/
お問い合わせ先:都ライト実行委員会事務局
Email: miyako.light@gmail.com
TEL: 080-6235-8640(実行委員代表)

天鵞絨美術館
住所:〒602-8482
京都市上京区浄福寺通上立売上る大黒町689-3
HP: https://somacho.co.jp/museum/
染織文化オープンファクトリー
※詳細は公式情報をご確認ください。
レポーター
アーティスト・フォトグラファー
天鵞絨という言葉は知っていても、実際にどのようにつくられ、今どんな可能性を持っているのか、今回のお話を聞くまで知らないことばかりでした。伝統を「残す」のではなく、今の暮らしの中で使われるものへとつないでいく杣さんのお話が印象に残りました。西陣で続いてきた技術が、これからどんな人やものと出会い、どんな形になっていくのか楽しみです。