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応仁の乱東陣プロジェクト10周年記念シンポジウム「応仁の乱前夜 足利義満と上京」開催レポート

案内ポスター
▲案内ポスター

令和7年9月28日(日曜日)上京区総合庁舎において応仁の乱東陣(ひがしじん)プロジェクト10周年記念シンポジウム「応仁の乱前夜 足利義満と上京」が開催されました。

募集開始早々からたくさんの申込みがあり、抽選で当選された約150名の方が会場に足を運んでおられました。このプロジェクトへの関心の高さがうかがえます。

▲上京区役所4階 会場入口

応仁の乱東陣プロジェクトについて

「応仁の乱東陣プロジェクト」(以下、東陣プロジェクトという。)は、京都の大きな転換点である応仁の乱に注目し、西陣織で知られる「西陣」だけでなく、あまり語られてこなかった「東陣」にも焦点を当てて活動を続けています。

歴史シンポジウムの開催やまち歩きイベント、ゆかりの地への説明板設置などを通じ、上京区の魅力を広く発信し、地域の活性化に寄与してきました。平成27年の活動開始から10年を迎えた節目にあたり、今回のシンポジウムが企画されました。

開会あいさつ

▲応仁の乱東陣プロジェクト実行委員会 細尾真生会長

冒頭、細尾会長からは、これまでの活動を振り返り「ようやく『東陣』という言葉が認知され始めた」との言葉があり、取組の積み重ねが地域に根付いてきたことが示されました。

▲原真弓 上京区長

また、原上京区長は松井京都市長に代わり、東陣プロジェクトの成果に触れながら「地域の歴史と文化に根ざした活動に心から感謝します」と述べられました。

基調講演「見えてきた大塔-室町時代研究の現在」

▲満席の会場

シンポジウムでは、まず、関西学院大学文学部教授 早島大祐(はやしまだいすけ)氏による基調講演が行われました。

▲関西学院大学文学部教授 早島大祐氏

室町幕府第三代将軍 足利義満の時代に、相国寺、北山第に建造された巨大な塔の建設の目的や背景、また21世紀に入るまで注目されなかった理由について解説されました。

▲メモをとり熱心に聞き入っていました。
▲参加者の様子

これまで東陣プロジェクトでは、足利義満を直接のテーマとした取組は行われていませんでしたが、今回の講演は地域の歴史を新たな視点で捉える機会となりました。

相国寺大塔(相国寺七重塔)は応永6年(1399)9月15日、6年かけて完成しました。この塔は高さ約109mといわれ、日本建築史上最も高い木造の塔と記録されています。

義満は、早世した父・義詮(よしあきら)の菩提を弔い、天下の再興を示すために大塔を建立しました。

亡き父が果たせなかった天下の再興を、これまで以上の形で成し遂げたとアピールすることに成功したのです。

応永10年(1403)、相国寺大塔は焼失し、息子の足利義持が再建した大塔も文明2年(1470)に焼失しました。歴史の荒波を象徴する存在と言えるでしょう。

講演では、史料に基づく研究成果が紹介される一方、早島氏のユーモアある語り口で会場は和やかな雰囲気に包まれました。

パネルディスカッション「応仁の乱前夜 足利義満と上京」

▲パネルディスカッションの様子

基調講演の後早島大祐氏と京都産業大学文化学部教授 山本雅和氏によるパネルディスカッションが行われました。コーディネーターは実行委員会事務局長の豊田博一氏です。

▲京都産業大学文化学部教授 山本雅和氏

義満の時代背景や上京のまちとの関わりをめぐって意見が交わされ、参加者は熱心に耳を傾けていました。特に、相国寺大塔や北野経王堂等に関する考察、花の御所周辺の発掘調査に基づく見解など、普段触れる機会の少ない内容が紹介され、歴史への理解を深める貴重な機会となりました。

特別企画展「東陣プロジェクト10年の歩み」

▲「東陣プロジェクト10年の歩み」パネル展

会場では併せて「東陣プロジェクト10年の歩み」を紹介するパネル展示も行われ、多くの来場者が足を止めて活動の軌跡を確かめていました。 また、上京区役所2階では常設展示として「国宝 上杉本洛中洛外図屏風(複製パネル)」をご覧いただけます。

参考)カミング関連リンク

これまでのカミングで紹介した東陣プロジェクトにかかわる取材記事を公開しています。ぜひご覧ください

レポーター

岡元麻有<br />
(be京都館長)
岡元麻有
(be京都館長)

東陣プロジェクトが実施する事業はいつも人気で、参加されているみなさんの上京愛を感じました。早島先生は相国寺大塔が登場する、映画『室町無頼』の時代考証も担当されており、歴史研究と文化表現のつながりを感じました。