上京区に、新たな文化の扉がひらきました。
「おもちゃ映画ミュージアム(以下、「ミュージアムという」)」が中京区壬生から移転し、上京区で再び幕を開けています。
築100年を超えた京町家という趣ある空間に、大切に受け継がれてきた資料や道具がたくさん並びます。

館長の太田米男さんと、奥様で学芸員の文代さんにお話を伺いました。
長年にわたり映画と向き合ってきたお二人のまなざしが、この場所の随所に感じられます。
なぜ動いて見えるのか―映画の原理に触れる

円盤にスリットが入り、連続した絵が描かれている面を鏡に映して回転させ、裏側からスリット越しに覗くと絵が動いて見えます。アニメーションのしくみが小さなお子さんでも分かります。
館内では、戦前に流通した手回し映写機をはじめ、さまざまな機器や資料を間近に見ることができ、一部は実際に手に取ることもできます。
映画誕生のもとになった光学玩具、幻灯機(マジック・ランタン)、写真を始め、海外製の映写機、ステレオ・ビュワーなど、初めて目にする道具の数々に驚きます。
それらを、米男さんが丁寧に説明してくださいます。
「今はデジタルの時代で、原理を知らない人が増えています。なぜ映画が動いて見えるのか、映写機の中で何が起きているのか。そういうことを、実際に見て、体感してもらえたら嬉しいですね。」
おもちゃ映画を通じて未来へつなぐ


現存する無声映画フィルムは極めて少なく、その多くが失われつつあります。今では小型映画(16㎜、9.5㎜フィルム)にも範囲を広げ、発掘につとめ、寄贈も呼び掛けています。
往時を知る貴重な映像を修復・保存し、映像だけでなく関連機材も公開している民間の取組は非常に稀で、海外の専門家たちからも評価され、見学者も絶えません。
館内に掲示された世界地図には、ミュージアムを訪れた方の国にピンがひとつずつ重ねられており、
「これは私の宝物なんです」と文代さんが教えてくださいました。
小さなピンのひとつひとつが、世界各地から寄せられた関心の深さを物語っているようでした。

米男さんは大阪芸術大学で教授を務めたのち、長年にわたる映画研究や映画祭活動、玩具映画復元プロジェクトの経験を活かし、ミュージアムを設立されました。
フィルムだけでなく、銀板写真や鉄板写真など美術品的な貴重なものも展示されており、その背景にある技術や歴史を伝えたいという思いが伝わってきます。


1枚の絵でありながら、スリットによって変化して見える古典的な絵のアニメーション
映画文化と関わりのあるエリア

ミュージアムが移転されたこの地域は、映画の歴史とも深い関わりがあります。
明治時代、フランスで発明されたシネマトグラフを京都に持ち帰った実業家・稲畑勝太郎が最初に構えた染料店が西陣にありました。今夏にはその功績をたたえる碑が建てられる予定です。
また、「日本映画の父」と称される牧野省三が関わった芝居小屋「千本座」がかつて千本通に存在し、周辺は映画館でにぎわったエリアでもありました。
歴史を学び、そこから教訓を得て、今の立ち位置を知り、将来の方向性を知る。
当時に想いを馳せ、スクリーンの向こうにあった時間が今の風景と重なってみえてきそうです。
活弁上映会や講演会、企画展などの催しも行われ、「映画に関心のある人々の情報交差点になれたら」という太田さんご夫妻の言葉が印象に残っています。その言葉のとおり、この場所には映画文化を未来へつなごうとするあたたかい想いが詰まっていました。
おもちゃ映画ミュージアム
営業時間 10時30分~17時
開館日 金~月曜
料金 大人1,000円・中学生600円(小学生以下無料、障がい者手帳持参者は50円引き)です。現金のみ。
電話番号 075-496-8008
住所 京都市上京区黒門通元誓願寺下ル毘沙門町758
レポーター
映画がお好きな方はもちろん存分に楽しむことができると思いますが、私のように詳しくなくても、楽しく原理を理解することができます。ぜひ足を運んでみてください。太田さんご夫妻が愛情たっぷりにご案内してくださいます。